アトラン青本43巻無期延期に

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10月に刊行を予定されていたアトラン青本(ハードカバー)43巻『権力者のドッペルゲンガー』が無期延期になった。これはライセンス契約を結んで青本を発行していたユリシーズ社(Ulisses Medien & Spiel Distribution GmbH、略してUlisses-Spiel Verlag)の決定によるもので、42巻『反撃』までの巻は今後も流通するが、以降の巻についての出版は白紙となった形だ。VPMは43巻以降を取り扱う、新しいライセンス・パートナーを急募中みたい。

青本は、17巻から旧アトラン・ヘフトの『アルコンの英雄』サイクルが進行中で、件の43巻はヘフトでいう270話前後、簒奪者オルバナショルから父の玉座を奪還せんとするヤング・アトラン(笑)の闘いもいよいよ山場……なのだが、ここで島の王の工作員がからんで、アトランやオルバナショルのデュプロが登場して一騒動な一幕、その完結編のはずだった。
ユリシーズ社とのライセンス契約は2011年10月からスタートしている。丸2年で契約解除ってことは、やっぱり、あんま売れなかったのだろう。まあ、いまじゃE-Book版もあるわけだし、やむをえない。

で、ライセンス契約による出版は、実はユリシーズ社がはじめてではない。
青本30巻『ヴァルガン人の待避所』から35巻『魂の癒し手』までがEdel-Verlag、36巻『アコン=アコンの世界』から38巻『アコン人の遺産』までがFanPro-Verlag(ファンタジー・プロダクション)、ユリシーズ社は39巻『ブルーの星系の猛追撃』からとなっている。
……正直、どれも長続きしていないような。

ライセンス契約を結んだ中で、一番手広くやっていたのがファンプロで、2006年から開始された、俗に“アトラン・ポケットブック(Atlan-Tachenbücher)”と呼ばれるシリーズはすべてファンプロから刊行されている。
レプソ、ルデュン、イロヒム、リコ、モノリス、地獄惑星、マラシン、星の欠片、ポリコーラと、一部をのぞき三部作で、2012年11月の『無限の敗残兵』までぜんぶで28巻。時代は3102年から3126年、三部作ごとに一応ストーリーは完結しつつ、伏線やら登場人物やらはひきついだりしている。太陽系帝国から三大星間帝国が独立し、銀河系内部がいろいろ物騒なご時世に、過去銀河系に来訪した異種族の遺産もからんで、案外おもしろそうなんである……が、すべて消化してきれいに完結したわけではないので、ちょっと残念。

また、2009年から2010年にかけて、ATLAN-Xという、これまたポケットブックの、いわば新・アトラン歴史冒険譚なシリーズが全6巻、やはりファンプロから出ている。マーク・A・ヘーレンが草案を担当とあるが、これ当初はぜんぶクナイフェルが書いてたはず……なんだけどな。
ともあれ、ファンプロが2012年いっぱいで、ローダン関係から手をひいてしまったのは、いろいろと残念な話ではある。あんまたくさん出ていると、正直追い切れない面もあるのだが、ヘフト本編がなにかとじれったい昨今、新しいエピソードが出版されつづけていたのは心強かったのだが。

あとは、ライセンス契約とはちょっとちがう気もするが、親会社筋のハイネ出版から出ていたローダン・ポケットブック・シリーズも現在刊行が止まっている。2002年から2011年まで、年イチのペースで出ていた、三部作もしくは全6巻のシリーズは、最初の『アンドロメダ』が好評だったため、オデッセイ、レムリア、《パン=タウ=ラ》、ポスビ戦争、アラ=トキシン、赤い宇宙の帝国、テフローダー、ジュピターと巻をかさねたが、ローダン編集部の言によると、「いまNEOが忙しくて、ポケットブックやらエクストラとかよーやりまへんわー」とのこと。
まあ、NEOは、主に若い世代を中心にそれなりに好評みたいなんで……。
(でもアレ、まだ作中年代1年ちょっとしか経ってないんだよなぁ)

SF斜陽の時代とか言っていたのも今は昔。すでに日没っちゃったかどうかはわからんけど、いずこも台所事情は厳しいのだろう。
どっかの日本語版も、部数減ってるとか聞くけど、だいじょーぶなんかにゃー。

■公式NEWS:ATLAN Blauband 43 kommt nicht im Oktober

2019/06/19追記:
その後の経過をさっぱり書いていなかったわけだが(^^;
結局この翌年(2014年)にBaukau Fiction Verlagとライセンス契約を結んで43巻『権力者のドッペルゲンガー』、44巻『太陽の力』、45巻『叛徒の進撃』の3冊を出版。「アルコンの英雄」サイクルの閉幕をもって、Blaubandの刊行は終了した。

Posted by psytoh