ペリー・ローダン・シリーズとは

ペリー・ローダン・シリーズとは

ヘフト版第1話表紙
© Pabel-Moewig Verlag KG, Rastatt

ペリー・ローダン・シリーズ(Perry Rhodan-Heftserie)または宇宙英雄ローダン・シリーズとは、1961年からドイツ(旧西ドイツ)において週刊で刊行がつづけられているSFシリーズ、並びに1971年から日本で刊行されているその翻訳版のこと。また、スピンオフ的な各種出版物全般を指していう。
シリーズ本編は2019年現在で3000話を超え、まさに“世界最大のSFシリーズ”の名に恥じない歴史と規模がある。

執筆時点から10年後の1971年を想定し、東・西・亜の三大ブロックに分かれた地球諸国の冷戦下、世界最初の月着陸船《スターダスト》をアメリカが打ち上げる場面から物語は開幕する。月面に不時着した〈大帝国〉の宇宙船とコンタクトを果たした船長のペリー・ローダン少佐は、貸し与えられた超技術をもって地球を統一し、人種・イデオロギーの別なく〈地球人テラナー〉として銀河系、ひいては大宇宙へと進出する道を築くべく、ゴビ砂漠に〈第三勢力〉をうち立てる。
アルコン人の〈大帝国〉を中心とする既存の銀河文明のなか、手八丁口八丁でのしあがっていく新興勢力テラ。さらに他の銀河の勢力とも交流をかさねるうち、ローダンらは宇宙の背後に存在する、強大な力を感じざるを得なくなっていく。秩序を旗頭に生命・知性を育成するものたち、与えられた秩序にあらがうものたち。その壮大な流れの中で、人類と銀河系の種族たちは自らの立ち位置をどう確保していくのか。高次勢力の築く巨大機構において、個々の生命の意味は何処にあるのか――。
と書くとやや大仰だが、実際の物語は、そう、要するに壮大なスペースオペラなのだった。微妙に時代世相を反映したストーリーは、時に高みをめざし、時に迷走し、そして現在も続いている。

ペリー・ローダン・シリーズの出版形態

シリーズの中核となるのは週刊のヘフト・シリーズ。ヘフト(Heft)とは、ドイツ語でノート・冊子を意味し、転じてキヨスク等で販売される平綴じの読み物本のこと。A5判(21cm×15cm)で本文60ページ程度。読者とのコンタクト・ページ(Leserkontaktseite/LKS)4ページに解説記事(現在はPR-Kommentar)や用語集(Glosser)、月イチで中綴じ附録のレポート(科学記事)やファンダム情報なども収録される。
また、各種スピンオフ・シリーズが存在し、ヘフト、ポケットヘフト(平綴じ)、ポケットブック(ペーパーバック)、ハードカヴァー版、近年は電子ブックも加わり、形態は多岐にわたる。出版、というと少々語弊があるが、オーディオドラマ版のみのシリーズもある。

複数作家によるリレー形式で、2019年現在、チーム作家・ゲスト作家含めて参加者は延べ49名。ヘフト・シリーズものにおいて複数作家で執筆することはめずらしくないが、ローダン・シリーズでは“草案作家(Exposé-Autor、複数の場合はExpokratenとも)”というまとめ役を置き、これが各作家の担当話・内容を割りふることでストーリーラインの統一を図っている*1。初代草案作家はK・H・シェール。二代目フォルツが死去した後は、複数作家がこの重任を担当している。
制作のおおまかな流れとしては、全作家が参加する会合(現在は年1回)で、草案作家が提示した構想をもとにブレインストーミングを展開、おおよそのストーリーを決定する。その後、草案作家、編集長、技術担当、データ担当など複数メンバーからなる打ち合わせ(Exposé-Factory/草案工房などとも言う)で細部をつめた後、草案作家の執筆したプロット(ストーリーの中核、登場人物や新技術のデータペーパー等*2)が各作家に配布される。

*1)後続のシリーズには草案制を採用したものも多い。他社の例だと『ザモラ教授』や『ドリアン・ハンター』など。
*2)凝り性の三代目ツィークラーは、これが30ページに及ぶこともあったらしく、作家陣から大いに不評を買ったらしい。

ローダン宇宙の深淵へ

Posted by psytoh