NEO320巻『黒き架橋』

NEO

12月22日発売の320巻『黒き架橋』より、ローダンNEO新シーズン〈カトロン〉がスタートした。
テラニア中心部に突如出現した黒い碑は、太陽系を包み込んだ時間バリアとともに無愛症アフィリアを引き起こした。それは遥かなM-87銀河に座する超バイオコンピューター〈カトロン〉が、人類の脳髄をパーツとして収奪せんがため。かろうじて太陽系解放に成功したローダンらは、脳髄輸送のため建造されていた巨艦《バジス》で、脅威の源泉たるM-87へいたらんとする。西暦2113年12月17日、謎多きディメトランス・エンジンの“黒き架橋”をもって……。


ポーヴェーヒー……「果てしない創造の装飾された暗黒の源」と、2019年にEHTで初めて撮影されたブラックホール(シャドウ)を、ハワイ大学の研究者はハワイ創世神話にちなみ、こう呼んだ。おとめ座銀河団、銀河系から5500万光年の距離にある、巨大楕円銀河M-87の中枢部にある活動銀河核だ。その質量、恒星ソルのおよそ65億倍……!
高くなったり低くなったり、耳障りな音はなんだ。自分は、1秒足らずで済むディメトランス跳躍のためにコールドスリープ状態にあったのではないか。“瞬間切替スイッチ”の異名をもつペリー・ローダンは、えづくような口内の違和感をおしやって、周囲の状況を把握していく。鳴り響くアラームは、艦載脳〈ハミラー〉により停止された。司令室のホロドームには、色調補正されたガスや宇宙塵、小惑星を含む岩塊の荒れ狂うさまが映し出されていた。その心奥にあるのは、絶対暗黒の“喉”……巨大ブラックホール“ポーヴェーヒー”にちがいない。
だが、なぜまだ《バジス》はこの巨大なくるみ割り器のすぐそばにとどまっているのか。本来、M-87到着後、ブラックホールから一定の距離をおき、乗員5万名の再覚醒プロセスを実行するはずだった。司令室要員だけ、緊急に覚醒させる要件が生じたのだ。艦隊母艦の“上方”に、強い放射線を発する物体が接近しており、遷移フィールド・プロジェクターが機能しないという。
全長20mほどの“棍棒”は、ローダンには宇宙船のように思われた。しかも、損傷しているのか、動きがおかしい。このままでは、いずれ事象の地平へと引きずり込まれる――遷移できなければ、《バジス》もろともだ。一瞬相対的に静止するかに見えた棍棒艇は、まもなく《バジス》船尾に不時着――墜落――し、外壁を覆う岩石にクレーターを穿った。
いたとすれば乗員も亡くなったかと思われたが、やがて棍棒艇の先端にハッチが開き、奇妙な存在が姿をあらわした。座布団に強靱な四本足がはえたようなそれは、這いずるように進みはじめた。すでに覚醒していた艦長メルバル・カソムが戦闘ロボットを動員しており、異生命体の周囲を固めたが、相手はむしろ、ロボットが出てきたエアロックをめざした。
奇妙な状況ではあったが、ローダンは異人を“難船者”と判断し、収容を決定。未使用のラボのひとつを利用し、他のエリアから隔離することとした。棍棒艇の機能が停止すると同時に、UHF帯域に発されていたハイパー波も消失。《バジス》はポーヴェーヒーから500光年の距離を置くべく、遷移を実行した。

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遡ること1ヵ月。《バジス》はディメトランス跳躍のため、銀河系中央ブラックホール・サジタリウス*Aを周回しつつ加速をはじめていた。冷凍保存した脳髄が“毛細血管”経由で転送できないため、M-87への輸送及びその警護艦隊の母艦としてタイタンで建造された巨艦《バジス》。乗員5万名はテラ連合と太陽系ユニオン各地から結集した曲者揃い。
艦長、エルトルス人メルバル・カソム。副長、シガ人ハール・デフィン。通信・探知部門は《クレストII》からドイツ系テラナー女性サラ・マース。第一パイロット、エモシオ航法士エラス・コロム=カン。医長は伝説の《マゼラン》船医を務めたジュリアン・ティフラーの娘リア・ティフラー
科学部門の長はネクシャリスト、レス・ゼロンだが、艦載脳〈ハミラー〉の開発者ペイン・ハミラーは100歳と高齢ではじかれるところ、乗せなきゃ政府とローダンを訴えるとゴネて席を確保。NEO版エリック・ウェイデンバーンは、宙族に殺された両親の会社を継承したアンドロメダ一番の富豪で、自説STAC……“スピリチュアルに起因する完全性の配列”を科学をもって証明することに憑かれたテティサー(正篇のテフローダー)。なんでも、現在ホイッスラー・カンパニーのオーナーでもあるとか。最新の技術をつぎこんだ研究船《STAC》ごと、助言者としての参加。さらに、前巻で亡くなったライプニッツの後継にあたるロボット心理学者ガルト・クォールファールト
“大宇宙の救世主”ことグッキーや、テレポーターのラス・ツバイ、オクストーン人オマール・ホークと相棒のオクリル“ワトソン”など特殊能力者も乗り込んだ。
率いる遠征司令は、いわずと知れたテラナー、ペリー・ローダンと、アルコン人トーラ・ローダン・ダ・ツォルトラル。

いわずと知れた、正篇からの転生組がぞろぞろと(笑)
カソムは150話登場USOスペシャリストの代名詞。
相棒のレミーがまだ6歳なので、サンダーボルト・チームからデフィンが代理出演w
コロム=カンは正篇では《マルコ・ポーロ》艦長。
サラさん、リアさんはNEOオリジナルのキャラクター。
レス・ゼロンは正篇でも《バジス》の首席科学者(1000話台)だが、今回はネクシャリスト。いきなり墜落してきた異星人の担当させられるあたりが、グローヴナーくんを思わせますにゃあ(笑)
ペイン・ハミラー、共同開発者が妻のデメテルさん(故人)と、こっちの方が幸せじゃんと思ったら……?
ウェイデンバーンは、NEOでは一時レティクロン側にひきこまれたりもしていた様子。今回のSTACは、はてさて何になるやら。
ガルトは正篇では半ポスビ人間であったが、こちらではどんな活躍を見せるか。乞うご期待。

5万人+αをコールドスリープ・タンクへ送り込むのはひと苦労らしく、中には「怖くない。怖くなんてないぞ!」というやつの対処も必要だったり。オクリルに拳骨くれて、ホークがあわあわする場面もあったり。父(故人?)との関係が複雑そうな描写も見られるが、名親であるふたりを「ペリーおじさん」「グッキーおじさん」と呼ぶ彼女は、なかなかの豪傑w

〈理性の光〉としてカトロン断片の片棒をかついでいた長男トマスは、アフィリアから解放され、《バジス》の情報をもたらすなど、決戦にあたり重要な役目をはたしたものの、黒い碑を破壊する際、亡くなったロワ・ダントンとリンクしていたため、その意識が共存した状態。過去の罪悪感ともども、半ば廃人の状態が続いている。
義兄弟ファロクが亡くなったとき、その分まで生きると立ちあがった息子。彼は再び立ちあがるだろうか。

Twitter(X)では同行不可っぽい、と書いたが、加速が開始されて1週間後に病室を訪れているので、どうやらトマスも《バジス》にはいる様子。

転移30分前、艦は光速の95%に達した。司令室要員も人体冷凍保存クライオステイシス状態への移行が開始される。来し方、先に逝った友のことを考え、粘っていたローダンの視界に闇が落ち……可能性の扉が開かれた。

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Powehi (EHT Collaboration)

ポーヴェーヒーから500光年の距離をおき、小惑星群に隠れて乗員の再覚醒プロセスを開始した《バジス》。作業は滞りなく完了したかに見えた……ただ1名を除いて。ペイン・ハミラーが消えたのだ。記録映像は、ディメトランスの瞬間、ハミラーの姿が消失したのを明らかにしたが、原因は皆目見当もつかない。
また、予想外の事態も起きる。艦内あちこちで乗員同士のいざこざが発生し、医務室はてんてこ舞いとなった。ある疑念を抱いたリア・ティフラーはウェイデンバーンに協力を求め、快諾したテティサーは《STAC》の特別な計測装置で、UHFのさらに上、SHF帯域の上限ぎりぎり、いわゆる“プシオン領域”とされるハイパー波が、銀河中枢核ポーヴェーヒーから発されていることをつきとめた。これはアフィリアの研究者から〈カトロン放射線〉と呼ばれるものと等しい。ソル系では時間バリアとの相互作用で脳の扁桃体に影響をおよぼしアフィリアの原因となったのだが、ここではそれとは異なり、強い攻撃性を励起するらしかった。ローダンはウェイデンバーンの助言にしたがい、さらに銀河核から距離を置くことにした。

事態が小康状態をむかえたところで、ようやくローダンはレス・ゼロンに対応をまかせていた棍棒艇の異人と面会する時間をみつけた。異人は〈研究者〉種族のドウク・ラングルと名乗った。この銀河の調査にあたる途上、うっかり銀河核に接近しすぎて遭難しかかっていたと語るラングルは無私的救助に感謝しており、その話からテラナーは多くの情報を得る。

“脳”と“コンピューター”ということで、NEO第6期(エポック)が〈バルディオク〉と〈テルムの女帝〉を意識しているのでは、とは以前書いたのだけど。正篇では“テルムの女帝の研究者”だったドウク・ラングルまで出てきた。言葉を濁したけれど、《モジュール》に所属していることは判明した。どんな勢力が派遣したものやら……。

M-87の頂点に立つのは正体不明の〈中枢の設計者〉で、その意を汲んだ〈基地のエンジニア〉ドルイス種族をはじめ、スコアル、ドゥムフリー、ペレヴォンらが重きをなすこと。中枢部の情勢は〈カトロンの血〉と呼ばれる放射線の影響で混沌としているが、設計者が銀河中枢部からの脱出を許さないこと。
おりしも救難信号が受信され、ハルト人に似たチャルナズ・バクル種族の難民が老朽化した機関の事故で立ち往生しているのに遭遇したテラナーは、自分が助けてもらって言うのもなんだが救助活動は避けた方が良いというラングルの制止をふりきり、リア・ティフラーをはじめとする医療チームを乗せた巡洋艦《ラヴァナ》で駆けつける。

老朽化した機器の爆発で大破した艦では使者も出ており、グッキーもテレポートで補助するが救助は難航する。
そこに12隻のスコアル艦隊が出現。シク(指揮官)=ジル・アーント・アイマルは“不正な”救助活動の即時停止を要求する。1時間以内に撤収しない場合は、“攻撃とみなし”対応する、という。
戦士種族スコアルの艦だが、制御をうしない《ラヴァナ》と衝突寸前だった難民船を撃沈した際の火力からみて、戦闘になっても――最悪、小惑星群に隠れた《バジス》からの援護もふまえて――こちらに分があるとトーラは見立てたが、外来者である自分たちが現地当局と事を構えるのはよろしくないとのローダンの判断で、全力で負傷者や医療チームの収容を開始。
その一方で、腹の虫のおさまらないグッキーが、ウェイデンバーン謹製のナノ・マシンを3隻のスコアル艦にテレポートで運び込み、コントロールを失う事態に。救援部隊をいまだ展開中のテラナーは「(銀河系のモラル的に)もちろん、お助けしますとも」と弁をぶち、シク=アイマルを説得することに成功する。難民船の修理の許可もおり、彼らは中枢部脱出はかなわなくとも、故郷星系まではなんとか戻れる状態にできた。

だが、ここで思わぬ展開が。アイマルの最高上司であり、この宙域担当の第一基地エンジニアたるドルイサント、キボシュ・バイウォフから、ローダンと《ラヴァナ》及びその“拠点バジス”を、この宙域の中央たるデヴェル星系へ招待するとの通達が届いたのだ。そして、エスコート部隊として、123隻のスコアル艦隊があらわれた。アイマル――そしてキボシュ・バイウォフ――は、《ラヴァナ》とスペースディスク、シックスパック(正篇でいうシフト)の能力を正確に見積もった。《バジス》の存在も探知していたようだ。
平和な意図、新たな通商域の開拓という名目から、この招待を断ることはできない。M-87へ到着してまだ3日。事態は混沌として、いかなる道行きか知ることはできない。


……というわけで、キボシュ・バイウォフさんまで登場である。このドルイサント、正篇ではローダンらにしてやられまくりで実にいいところがなかったが、さて、NEOではどんな活躍を見せるか。
なお、《ラヴァナ》の綴りは、ハイパーインメストロン搭載の《ラワナ》とは違うので、バイウォフさんも安心である(笑)
戦士種族スコアル、基地のエンジニア・ドルイスと、正篇M-87サイクルのままの秩序機構がかいま見えるが、前記事309巻での推測が正しければ、〈中枢の設計者〉は1億年も前に滅亡しているはず。これだけ長大な期間、トップなしで体制が維持できるものなのか。“丸太”が出てくるあたり、ひょっとするとエスタルトゥ編なんかも、ちょっとからんでくるのかもしれない。wktk。

以下余談。
ポーヴェーヒーの写真を2019年に撮影したEHT。イヴェント・ホライズン・テレスコープの略。“事象の地平の遠眼鏡”ですよ! ちょうかっけぇ……!

Posted by psytoh