フルロックの聖域 -2- 前編

ハヤカワ版, 誤訳

すでにお腹いっぱいな気もするが第2章……。

■23p

ハヤカワ版:
涙滴型の搭載艇に、

原文:
auf das eiförmige Beiboot

試訳:
卵形の搭載艇に、
#卵→涙滴は1章にもあり。

ハヤカワ版:
「なんのつもりだ!」と、どなった。

原文:
“Um Himmels Willen!” entfuhr es ihm,

試訳:
「こいつはまた!」と、口をついて出る。
#「天意にかけて!」はびっくりしたときの常套句。まあ、あとで喧嘩してるから、ここで怒るのもありかなあ。

ハヤカワ版:
なんとかバランスをとって、ハッチに到達。

原文:
Irgendwie gelang es ihm, durch das Schleuse zu kommen, ohne das Gleichgewicht zu velieren.

試訳:
どうにかバランスを崩すことなくハッチをくぐり抜けた。
#通過したので、次の文章が船内になる。

■24p

ハヤカワ版:
そこで大声が聞こえ、立ち往生した。
原文:
Zeno hörte ihn im Innern des Beiboots rumoren, dann ertönten ein paar Flüche;

試訳:
船内でがたごと物音がした後、悪態をつくのが聞こえた。
#立ち往生というか、ローダンと口論してるのでわ。

ハヤカワ版:
もう荷物を置いたらしい。

原文:
(なし)

試訳:(削除)
#確かに前後から推測がつくことだが。

ハヤカワ版:
「そうは思わないが。一匹狼タイプだからな」

原文:
“Er ist eben ein Individualist.!”

試訳:
「まあ、かれは一匹狼タイプだからな」
#実は思ってたりして(笑) eben には「だからさ」という、半ば同意の意味があるのだ。

■25p

ハヤカワ版:
「そうじゃない!」アッカローリーはきびしい口調で、「もちろん、同行するさ。いまのは気の迷いだ。忘れてくれ。

原文:
“Naturlich nicht!” versicherte der Accalaurie mit Nachdruck. “Herz und Verstand sprechen oft eine verschiedene Sprache.

試訳:
「むろん、同行するとも!」アッカローリーは強い語調でうけあった。「感情と理性はしばしば相反するもの。
#ま、これくらいの意訳は許されると思うが。

ハヤカワ版:
「突拍子もない行動は、好きではないからな。それでも、友にはちがいない。かなり変わった男だがね」

原文:
“Weil ich ihn nicht verstehe. Trotzdem glaube ich, daß er unser Freund ist, wenn auch ein ziemlich merkwürdiger Freund.”

試訳:
「かれのことが理解できないからさ。それでも、友であると信ずるのだ。まあ、かなり変わった友人だがね」
#誤訳ではない……と思う。ただ、こうしておいた方が、この話最後のローダンの科白「われわれ、理解し合っているというわけだ」(これも試訳)が生きるはず。

■26p

ハヤカワ版:
「搭載艇を使わせない気か?」と、アッカローリーがたずねた。

原文:
“Sie wollen uns doch nicht aufhalten?” fragte Zeno bestürzt.

試訳:
「止めるおつもりではないでしょうね?」と、狼狽したゼノがたずねた。
#一応、ヘルタモシュはお偉いさんなので。ローダンは自分も国家元首だからともかく。

■27p

ハヤカワ版:
「直接視認飛行でいきます」と、ガイト・コールが報告。

原文:
“Direkter Zielflug!” kündigte Gayt-Coor an.

試訳:
「まっすぐ目標へ飛びます!」と、ガイト・コールが告げる。
#リニア飛行じゃないんだから。

■28p

ハヤカワ版:
いまは時間を稼がなければならない。

原文:
Sie mußten jetzt vor allem Zeit gewinnen. Jeder übereilte Entschluß konnte alles verderben.

試訳:
いまは何より時間を稼ぐ必要がある。性急な結論はすべてをだいなしにしかねない。
#削除する必要はない。なくても通じる文章だが。

■29p

ハヤカワ版:
旧種族の惑星への着陸を禁ずる法のことは、知っているはずだぞ」

原文:
Sie kennen unser Gesetz, das uns den Kontakt mit Planeten alter Völker verbietet.”

試訳:
旧種族の惑星との接触を禁ずる法のことは、知っているはずだぞ」
#だからゾンデもまずいんじゃないかとゆー(1章)

ハヤカワ版:
「はっきりしているのは一点のみ。諸君にはわたしの援助が必要だ……そういうことだな」

原文:
“Entscheidend ist, daß Sie ohne meine Hilfe Horntol niemals erreicht hätten.”

試訳:
「決定的なのは、わたしの援助なくして諸君がホルントルにたどりつくことはなかったという事実だ」
#だから俺にもたたり責任があるんだよ……ということ。

ハヤカワ版:
脳ハンター

原文:
Gehirn des Jägers

試訳:
ハンター(の脳)
#異脳者と書いてサイナックと読ませたい(をひ

■30p

ハヤカワ版:
ヘルタモシュとのやりとりで、すっかり影が薄くなっている。

原文:
Die Auseinandersetzung zwischen den beiden Ceynachs und Heltamosch ließ den Petraczer völlig unbeeindruckt.

試訳:
サイナックふたりとヘルタモシュとの議論にもまるで動じていない。
#無関心とか泰然自若でもいいと思うが。

ハヤカワ版:
マト・プラヴトがふたたびスクリーンにあらわれ、ローダンはそちらに視線をもどした。
原文:
Als Heltamosch sich abermals meldete, wirkt er ruhiger.

試訳:
やがて再びスクリーンにあらわれたヘルタモシュは、ずっと落ちついて見えた。
#余計なものを足さずに、必要なものを残してもらいたい。

■31p

ハヤカワ版:
水源があるとか、花粉が原因の可能性も、充分にある。

原文:
Ebenso gut können es Wasseradern oder Blütenstaub sein.

試訳:
水脈や花粉が原因ということも、同程度考えうる。
#Wasserader は(地下)水脈。

ハヤカワ版:
防御バリアは展開していないから、

原文:
Es war ungeschützt

試訳:
無防備な状態で
#意味的には同様だが、大気圏突入時に、という見方もあり。

ハヤカワ版:
かといって、バリアをはれば、探知システムの注意をひきかねない。
原文:
Rhodan wußte, daß das Risiko eines tödlichen Angriffs bei einem solchen Unternehmen nicht ausgeschaltet werden konnte.

試訳:
こうした作戦の際、致命的な攻撃をうけるリスクが排除しきれないことは、ローダンには承知の上だ。
#無理矢理バリアに話をもっていこうとするから……。

ハヤカワ版:
ガイト・コールは操縦に専念している。未知の探知システムが存在するものと仮定して、できるだけ目立たずに着陸する必要がある。

原文:
Wahrend des Landemanövers ließ Gayt-Coor sich auf Keine Experimente ein. Er steuerte das eiförmige Kleinstraumschiff direkt auf die Oberflaäche des Planeten zu. Das mußte eventuellen Beobachtern den Eindruck vermitteln, daß diese Landung eine selbstverständliche Sache war.

試訳:
着陸操作のあいだ、ガイト・コールは“実験”をさしはさもうとはしなかった。小型艇をまっすぐ地表へとむける。もし観察者がいたとしたら、この着陸はしごく当然のものに思えただろう。
#自分で創作した部分に引きずられてどーするね。

■32p

ハヤカワ版:
まもなく、予定した着陸地点が視界にはいってくる。

原文:
Das Beiboot sank langsam auf den ausgewählten Landeplatz hinab.

試訳: 搭載艇はゆっくりと、予定した着陸地点へと降下する。
#視点をローダンに統一した、ということか?

……えーと、これで半分か。
前の章よりも、なんというか、“主観的な”文章が多いような気がする。訳者か編者かはわからないが、他人の作品を紹介してるって意識、ないのか、もしかして?

Posted by psytoh