ドイツSF大賞2023受賞作

ドイツSF

28日付SFCDのサイトで、ドイツSF大賞2023の受賞作が発表された。

◆長編部門
Nils Westerboer / Athos 2643 / アトス2643

西暦2643年、地球に人の住めなくなった未来。海王星の衛星(元カイパーベルト天体と思われる直径2kmの岩石)アトスの修道院で事件が起きた。問題は、衛星の生命維持を司る人工知性〈マルファ〉が“殺人”を犯したのか。異端審問官リュート・カルトハイザーが助手の人工知性ザックとともに派遣されるが、調査(尋問)は困難をきわめる。6名の修道僧に第2の死者が出るに及んで、リュートはザックの機能を制限する安全機構の解除を決断するが……。
犯罪SFかというとそうではなく、二部構成の前半utilは“集団の利益、最大多数の幸福をめざす”、後半deonは“より高次の目的のためなら被害も辞さぬ”、人工知能の倫理的状態を意味するらしい。そして、本書はホログラフィの助手ザックの一人称で進行する。
ラスヴィッツ賞では惜しくも2席、ファンタスティーク系のセラフ賞にもノミネートされた作品。

・その他順位
2席:Andreas Suchanek / Interspace One / インタースペース・ワン
3席:Sven Haupt / Wo beginnt die Nacht / 夜の始まるところ
4席:Aiki Mira / Titans Kinder / タイタンの子ら
5席:Aiki Mira / Neongrau / ネオングレー
6席:Jol Rosenberg / Das Geflecht. An der Grenze / 叢・境界にて
7席:R. M. Amerein / Roboter: Fading Smoke / ロボット:フェイディング・スモーク
7席:Theresa Hannig / Pantopia / パントピア
9席:Timo Leibig / Reaktor / 反応炉
10席:Andreas Brandhorst / Ruf der Unendlichkeit / 不死の呼ぶ声
10席:Kris Brynn / A. R. T. – Coup zwischen den Sternen / A.R.T. 宇宙美術品攻防戦
12席:Hans-Jürgen Kugler / Freier Fall / 自由落下

◆短編部門
Aiki Mira / Die Grenze der Welt / 世界の境界

カット――カタナ・キリクは長い間月面で戦闘に従事していた。長期間の低重力で筋肉は萎縮し、地球に戻ってみれば強化外骨格エクステンダーなしではろくに動けない体になっていた。運良く、最新型のエクステンダー(全長20m、重量1t)を扱える鉱山作業現場での職を得て、没入感に感激するカットだが。あるとき、現場にひとりの少年が迷い込んできて……。

・その他順位
2席:Yvonne Tunnat / Morsche Haut / 脆い肌
3席:Thorsten Küper / Hayes’ Töchter und Söhne / ハイエスの娘たち息子たち
4席:C. M. Dyrnberg / Fast Forward / ファスト・フォーワード
5席:Christoph Grimm / Die Summe aller Teile / 全部の合計
6席:Helen Obermeier / Der blassblaue Punkt / ペイルブルー・ポイント
7席:Michael K. Iwoleit / Briefe an eine imaginäre Frau / イマジナリー・ウーマン宛の手紙

DSFPの席次はラスヴィッツ賞とちがい投票数の項目がないので、どのくらい人気に差があったのかがいまいち掴みづらい。だが、今回の長編部門だと同点らしい作品もあるので、ポイント順なのは確か。どのくらい票が集まっているのかなあ。

■ドイツSF大賞:公式サイト(dsfp.de)

Posted by psytoh