If:1400話「エスタルトゥ」

メモ, ローダン

来週にはハヤカワ版が700巻『エスタルトゥ』の刊行を迎える。1399話「エスタルトゥ」/1400話「夜の神々」が収録され、広告でも1399話でのタルカン・サイクルの終結が謳われている。のだが。

ローダン・シリーズ現役最古参の作家アルント・エルマー。四半世紀にわたり読者とのコンタクト・ページ(LKS)の担当、通称“LKSおじさん”も務めた彼が、2503話のLKSで語った回想には、ちょっと驚くべきネタもある。
1982年にホイゼンスタムのフォルツ宅を訪れた際に、「フォルツは1500話でローダンを完結させることを考えていた」という。1000話で将来の人類の進化を書きあげ、究極の謎の2つまでが道標にすぎないことを1200話で示唆したうえで、モラル・コードの修復が最後の謎〈法〉の回答をもたらすとしたら、もうそこから先はないと思っていたのかも。

ともあれ、同じ回想で、エルマーは1400話前後について、こう述べている。

本来1399話ではヘクサメロンの部分的謎解きがもたらされる予定だった。ペリー・ローダンの解読したあるカセットの中で、炎の侯爵アフ=メテムが催眠暗示的手法でヘクサメロンの歴史を物語る。ローダンはすべてを“間近で”体験する。彼自身が炎の侯爵なのだ。彼自らエスタルトゥを狩りたて、苦境のただなかで超知性体は自身を分散させ、意識片としてベングエルとジュアタフに分かつことでおのれを救う。最後にローダンはハンガイ第四クォーターとともに標準宇宙へ転移し、13ヵ月が過ぎ去っていることを確認する。
1400話ではエスタルトゥの再生と、その力の集合体である十二銀河への帰還が前面に押し出されるが、1401話以降の展開も用意される。ハンガイからのハウリの銀河系侵攻のゴングが鳴らされる。
だが、実際はそうならなかった。

ヘクサメロンの歴史とは、後に草案作家マールが惑星小説358巻『七日目の主』で描き出した、超知性体アイセルの力の集合体(後のエシュラア・マグハアス)の銀河クラスの支配者から選抜された“七強者”の勃興と失意の、そして混沌の勢力の傀儡としてのヘクサメロン発展の物語だろう。この本ではヘプタメルの従者バンダルの視点だったが、アフ=メテム(アルフール)はただひとりアイセルの管轄外の銀河から選出され、ヘプタメルの腹心となった存在なので、まただいぶ違った観点ではあっただろうが。
そして、文中の“ローダンが解読したあるカセット”とは、おそらく同じくマールが惑星小説309巻『アムリンガルの宝玉』で触れたデータ・キューブ、ないしはカンターロ・サイクルで登場する〈ミモトの宝玉〉と同種の、“アムリンガルの年表のアブストラクト・メモリ”であり、そこからアムリンガルの所在、ひいては〈それ〉の歴史についての手がかりが得られたと思われる。
ハウリの銀河系侵攻に関しては、カンターロ・サイクルでも“百年戦争”として話題に上るが、現実により脅威だったのは〈ブリッツァー〉なので、歴史の闇に沈んだといえる。まあ、指揮官(アス=レテル)がパニック起こして逐電しちゃってるからね……w

アス=レテル(アコス)は、元々はハンガイ銀河の支配者で、ハウリを補助種族にしていた。ヘプタメル(シリクジム)とは敵対関係にあったためか、二十の領地最大の銀河ハンガイの支配権はアフ=メテムに奪われてしまうが、時間終点計画のメーコラー・サイドは彼が担っていた……はずだ。

ストーリー予告「ヘクサメロンの王国」では、ローダンが沸騰するプロト物質の中心で“新生”する展開が告げられていたので、テラナーはなんらかの要因で再び死に瀕したタルカンを訪れる必要が生じる。実は、上記惑星小説358巻の終盤で、ウリアン/ボラムに続く“ハイパー物質シーソー”が登場する。インフレすぎるがwww
あるいは対ステーションのいらないこれを撃破するため……にしても、単身では向かわないような。ほんと、どーなったんだろ。

上記回想は、編年体でシリーズの歴史をまとめた“Perry Rhodan – Die Chronik: Biografie der größten Science Fiction-Serie der Welt”のvol.3にも収録されている。kindle版がAmazonJpでも購入できるので参考までに。

Posted by psytoh