異宇宙舞台の宗教対決

メモ, ローダン

前記事「ヘクサメロンの王国」の続きのような話である。

以前Twitterで「GOIはユダヤ教でいう“異教徒”」とつぶやいたことがある。PIGもユダヤ教由来ではないかと思っている話は先ほどツイートした。
また、最近のブログでは、ヴ・アウペルティアのことを“エレメントの主”と書くが、マガンとの電話で「“十戒”をもたらすものだから、キリスト教の神様でしょ?」と話していたのがその理由だが、ごめん、ユダヤ教の神様だね。

なんで突然こんな話をはじめたかというと、タルカン・サイクルの敵が同じユダヤ教の神様がモチーフだからである。1350話に出てくる「ヘクサメロンの書」の歌(あの訳だと完全に散文だけど)にいう〈支配者ヘプタメル〉は、“6日かけて世界を滅ぼす(そして新生させる)”〈七日目の主(Der Herr des Siebten Tages)〉だ。
ドイツ語Herr(支配者)は讃うべき主を意味する。支配者でも間違いではない(むしろ主だとわかりづらい)が、今回は〈主ヘプタメル〉でいかせてもらおう。

エシュラア・マグハアス(二十の地)を統べるとされる組織ヘクサメロン。
その頂点に立つ主ヘプタメル(現地語ではシキム・マルカー)は〈七の日の主(Herr Siebentag)〉とも表現されている(ハヤカワ版は“七番目の日”としているが)が、正確には惑星小説358巻のタイトルの通り〈七日目の主〉である。ヘクサメロンの書の歌を信ずるならば、宇宙(タルカン)のすべてをその身に含有し、七の日に新生した宇宙にただひとり顕在することになる。

で、最初にわざわざユダヤ教、と述べた理由だが、対する側がキリスト教モチーフなんである。
タルカン宇宙を放浪する旅路でローダンは、ハンガイ脱出計画を進行する22種族連合(22はユダヤ教・キリスト教の聖なる数)と遭遇するが、エスタルトゥの消息は知れない。むしろ“主ヘプタメルの勝利の証”を見せつけられる。エスタルトゥはタルカンにも、もういない……。
一方で、テラナーはいみじくも自分が“ヨルダン(Jordan)”と略した存在により〈聖別されし者〉となる。すなわち、ヨルダン川のほとりで聖ヨハネの洗礼を受けたナザレのイエスのごとく――。

1372話「タルカン行き十二の宇宙船」は、ローダン救出のため〈それ〉の援助を得たアトラン率いる12隻の小艦隊が異宇宙へ到達するまでを描くストーリーだが、この数字は十二使徒とみてまちがいない。
そして「ヘクサメロンの王国(これも神の王国のもじりか)」の最後、沸騰するプロト物質の中へ落ちたローダンが新生するくだりは、明らかにキリスト復活がモチーフになっている。これマジやるの? どーすんの? と思ったものだが。

ただ、前回の記事や『カオターク・ミーティング』でも書かれたように、物語はヴルチェクが予言したようには進まなかった。なにせ主ヘプタメル登場まで尺が保たなかった(走召木亥火暴)
ので、“復活”するのもローダンではない。見てみたかったような、こわいような、そんな実現しなかった宗教対決であった。

Posted by psytoh