Die Herren der Straßen
ハヤカワ版722巻『《バルバロッサ》離脱!』で、本サイクルの鍵をにぎる種族Herren der Straßenの訳語が決定した。〈ロードの支配者〉というのは、Schwarze Sternenstraßenがブラック・スターロードになった時点で、まあ予想の範囲内。最近Herrは問答無用で“支配者”なのは、主ヘプタメル関連でも書いたとおり。
でも、今回はそれじゃあかんのよ……。
ちなみに、今回の関連用語を整理してみよう。
ドイツ語 | ネイスカム | ハヤカワ版 | rlmdi.訳 |
Schwarze Sternenstraßen | ? | ブラック・スターロード | 星の暗黒回廊 |
Herren der Straßen | ドゥル・アイ・ラージムスカン | ロードの支配者 | 回廊の主人たち |
alte Herrscher | マクラバン | 古の君主 | 旧主 |
Archäonten | 太古種族 | 始祖たち |
ドイツ語→日本語という翻訳の点では、なんら間違いはない。以下は、その訳語を避けた個人的な理由である。
まず“太古種族”に関しては、エレメントの主ことヴ・アウペルティアを指すdas Alte Volkと丸かぶりなので、当時あれこれ検索して、始祖鳥(Archaeopteryx)――まあ“太古鳥”くらいの意味なので、言ってる内容としては変わらないわけだが――から採用して「始祖たち」にした。
Herrenについては、Twitterで「このサイクルは単数・複数が重要になる」と書いたことがあるのだが、彼らはこのサイクルの黒幕候補(複数形)であり、もう一方の自称敵(単数)との区別が必要。なので複数形のときはいちいち“主人たち”としていた。
そしてもうひとつ、主人ないし主でないと、重要な伏線が死ぬのだ(笑)
1472話「不死者たちの桟敷」(ヴルチェク)の冒頭、ローダンに対する刺客がはなたれる場面が出てくる。指示を出す側のセリフは伏せ字とされ、対話が進む。刺客は相手を主(Herr)とくりかえし呼ぶのだが、そこにあるダブルミーニングが隠されている。
はい……承ります、主よ。(……)
主よ、理解しました。はい、アマゴルタの座標は承知しています。あなたの命で駐留する……警固艦隊のことも知っております。(……)
彼らが失敗することもありえましょう、確かに。(……)
そうした事柄は、わが種族のものにとり……異質、です。はい、わたしはご信頼いただいて結構です。(……)
わたしはアマゴルタへ赴くでありましょう。(……)
はい、主よ。任務……承りました。ペリー・ローダンを、殺すのですね。(……)
そのご質問は驚きました。はい、主よ。わたしは忠実にお仕えします。あなたの他に……主は存じません。――Nr. 1472 Loge der Unsterblichen
引用中の“主”はすべてHerr(単数)。当然“ご主人様”の意なのだが、最後の一文は、サイクル最後のどんでん返しの暗示でもある。でも、ここだけ「支配者」にしたらダブルミーニングにならないのよ(笑)
訳語が“ロード・マスター”ならば、刺客がナックなので、FGOの果心ちゃんよろしく全部「ますたあ」にする手もあったのだがw
作中、Herr der Straßenを名乗るキャラが登場するのは、実はこれより後、1474話からなのでうっかり見逃してしまうところなのだが(実際見逃していたのだがw)、後で読み返していて「ああ!」と唸ったもの。ヴルちゃんがんばってるんじゃよ……。
あと、名乗りをあげない状態では、ハヤカワ版にもすでに2名ほど登場している。
以下余談:旧主(Machraban)は、当時なんだか枕番みたいなのがイヤで、Machtの発音にならってマハラバンにした。これはもう完全に好き嫌いの問題であるwww
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