訃報:ハンス・クナイフェル
ハンス・クナイフェル (Hans Kneifel)
1936.07.11 – 2012.03.07
サボっているうちに、こんな記事が連続して掲載されることになろうとは。しかも、3ヵ月前のフランシスの訃報で「ひとり気を吐いている」と書いた人物について。
公式その他の情報によると、去る3月7日夜半、ローダン作家古株のひとり、ハンス・クナイフェルが死去したとのこと。急死とあるが、病名等は未詳である。享年75歳。
クナイフェルは現在ポーランド領であるシレジア地方に生まれ(本名はJohannes Kneifel)、戦後オーバーバイエルンに移住。1948年以降ミュンヘン在住であった。パティシエ修行のかたわら、高校卒業資格を取得し、また56年には『ぼくらを呼ぶ星々(Uns riefen die Sterne)』で作家デビューを果たしている。65年に教育学の国家試験に合格、67年から教鞭をとっている(いつからフリーの作家かは不明)。
68年、352話「死の沈黙の惑星」でローダン作家チームに参加。以後メインライターのひとりとなり、2635話までにローダン・ヘフト98編を執筆している。
※ただし、そのほとんどは1000話以前のもの。ハヤカワ版でクナイフェルが読めるのも、もうあとちょっとである。
ただ、クナイフェルの本領は、アトラン方面においてこそ発揮されていると言ってよかろう。アトラン・ヘフトでは133編を担当。惑星小説や、トラヴェルサン以降の新ヘフト、ポケットブック・シリーズを含めると200編以上の作品が残されている。特に、惑星小説内シリーズでもある《アトラン歴史冒険譚(Atlan-Zeitabenteuer)》は、アトランティス崩壊とともに地球に島流しになったアトランが、黎明期の人類に影響を与えながら帰郷の道を模索しつつ、歴史のなかを転々としていくもので、総60巻におよぶ。様々な時代の英雄・天才・美女が登場し、また数多くの人類史上の事件に関与しながら、アトランの冒険は1971年(作中)の海底ドーム避難まで物語られる。
ローダン以外にも、メーヴィヒの主だったヘフト・シリーズに多数参加している。ドラゴン、ミュトール(ファンタジー)、デーモンキラー(ホラー)、海狼(海洋/海賊)他、テラ・ヘフト系列に小シリーズをいくつも抱えている。
また、ローダン関連から遠ざかっていた2000年代には『ダリウス大帝』『女帝エカテリーナ』『我はフランシス・ドレーク』など、歴史小説を数多く発表している。本気か否か、一時期はノーベル文学賞を狙っていたともいう。
カピン・サイクルを実質4人で乗り切ったメンバーのひとりであるから、量産可能な作家なのは承知していたが、あらためて見ると、実に多作な人であった。ローダンで邦訳されたものなど、まさに氷山の一角である。
歴史冒険物の新作アトランXなど、ローダンやSFに回帰しつつあったことでもあり、その逝去は残念の一言につきる。ご冥福を祈りたい。
■公式News:HANNS KNEIFEL IST TOT (リンク切れ)
※愛称を本名ぽくしたものか、90年代頃からHans→Hannsと表記することアリ
■Perrypedia:Hans Kneifel
■Wikipedia(日本語):ハンス・クナイフェル
ディスカッション
コメント一覧
つい今しがた、ドイツのARDをたまたま見てしりました。
これで初期時代の作家で存命はエーヴェルスだけ。悲しいもんです。