訃報:ライナー・カストル

作家情報

ライナー・カストル (Rainer Castor)
1961.06.04 – 2015.09.22

9月25日付け公式サイトによると、ローダン作家ライナー・カストルが22日午後、心筋梗塞のため急死したとのこと。享年54歳。

カストルは、生涯を過ごしたラインラント=プファルツ州アンダーナッハで、1961年に生まれた。当初、建築技師になる勉強をしていたが、そちらを断念後、さまざまな職種を転々としていたようだ。Wikiに載っているだけで、短期志願兵とか配送ドライバーとか州議員の懐刀とか教育機関の管理事務所勤務とか(笑)

筆者が初めてカストルのことを耳にしたのは、関東FCの月例会であったかと思う。ハンス・クナイフェルがポケットブック(当時は惑星小説)でアトラン歴史冒険譚を何巻にも渡って執筆している背景には、ファンあがりの博覧強記のブレーンがついている、という噂で、おそらく氏名までは伝わっていなかったような。Perrypediaの略歴にも「歩くデータバンク(wandelnde Datenbank)」と表現されている。
その縁で、後に「技術担当」として草案チームに参加と、これも略歴にあるが、おそらく「物理学担当」ことクルト・マールが1993年に、「工学担当」ことペーター・グリーゼが1996年に亡くなっている空白を埋める形だったのではないか。実際、かれの最初の商業作品は1996年に出版された惑星小説396巻『アルコンの栄誉のために』である。
1959話からローダン・ヘフト巻末コラム「ペリー・ローダン・コンピューター」(2000話から「ペリー・ローダン・コメンター)を担当。もともとはマールの指定席だった。

そして1973話『《マテリア》』からローダン・ヘフト本編にも参加。往時のシェールを髣髴とさせる技術描写の数々は、そのあたりが好物な人間にはたまらない一方で、人物描写やストーリーよりガジェットに重きがおかれていると非難する向きも多かった。
合体超巨大フラグメント船《プラエトリア》の頃(2211話)がひとつのピークであったろうか。以後、ヘフト執筆数は急速に減り、2817話『ラヨン人の対抗策』まで29編を担当したにとどまった。

最初のきっかけがアトラン歴史冒険譚だったこともあり、カストルのアトラン(およびアルコン)への愛着は深かった。過去のヘフトや惑星小説に出てきたアルコン語や文化を整理・分類した結果は ATLAN-Extra や青本14-16巻の「アルコン三部作」などに結実し、現行のローダン・ヘフトでは一般的に用いられるようになった。
顕著な例を挙げると、「ツォルトラル家のトーラ(Thora von Zoltral)」「ラス=トオルのアウリス(Auris von Las-Toór)」は、共にドイツ語で貴族を表す“von(~の)”が使用されていたわけだが、これが最新版ヘフトではアルコン語は「ダ(da)」、アコン語は「タン(tan)」があてられる。「トーラ・ダ・ツォルトラル」「アウリス・タン・ラス=トオル」なのだ。アウリスたんでわない(ぁ
ペリペとか遡ってじゃんじゃん修正しちゃってる始末(汗)

アルコン三部作以降、カストールはアトラン青本の再編集担当に就任するわけだが……題材は、若き水晶王子アトランが父の仇オルバナショルIII世打倒をめざす、旧アトラン・ヘフト「アルコンの英雄」サイクル。まさに適材適所、腕の振るい甲斐があろうというものだ。途中何度か出版元の変更がありゴタつきもしたが、ようやく昨年末、45巻『叛徒の進撃』をもって無事全巻の刊行が終了したばかりであった。
他に新アトラン・ヘフト数作や、2本のオリジナルもあり、中でも中世歴史モノ『血の代官(Der Blutvogt)』は評価が高いらしい。

とはいえ、筆者個人的には、ライナー・カストルといえば“縁の下の力持ち”なのだ。彼がチームに加わって以降、ヴルチェクが引退、フェルトホフが死去、盟友クナイフェルも世を去った。それでもカストルは、ずっとずっと“技術屋”でありつづけ、代々の草案作家たちを支えつづけたのだ。お疲れ様でした。

■公式サイト:Rainer Castor ist verstorben

Posted by psytoh