大宇宙の救世主、倒れる!?

ローダン

3072話「イルト死すべし!」において、18話「ツグランの叛徒」で登場して以来多くのファンに愛されてきたネズミ=ビーバーのグッキーが惨殺された件について。
動揺して思わずTwitterでもつぶやいてしまったのだが、

ちょ、待っ……渦状銀河(Spiralgalaxis)……。
このタイトルだからこそ、絶対ないと思ったのに。

3072 . Leo Lukas / Der Ilt muss sterben! / イルト死すべし!

ダールトン生誕100年とか祝いつつ、なにしとん……。— PSYTOH Reiji/西塔玲司 (@psytoh_reiji) July 2, 2020

当面は、その生存(復活?)を信じて待つことにした。
主人公ローダン自体が、過去「吸魂鬼に生命エネルギーを吸い尽くされてひからびたミイラに→活性装置がゴンゴン脈動して復活(トラドム編)」とか「銀河系を救う代償に殺害される→敵が保管していたÜBSEF定数テャマスィーを遺体に詰めなおして復活(星墓編)」とかやらかしているのだ。アーガイリスによる替え玉(カンターロ編)は言うにおよばず。大丈夫、うん、大丈夫……。
ただ、上記の枝発言で『クローンを殺して見せるのも、アトランの身柄が欲しい敵方としては悪手。』と書いたが、犯行に及んだのはカイラ人ではないのでこれについては誤りだった。ヤバ。

経緯としては、
①カイラ人が、アトランの娘ヤスミン・ダ・アリガの身柄の拘束をモンキーに要求。
②モンキーがヤスミンを収容した際、監視として同行していたトモパト人2名が彼女を誘拐。
③救出にむかったグッキーも、超能力に介入されて誘拐される。
④シリング星系でヤスミンさんは奪回されるも、グッキーはカイラ人の手に。
⑤グッキーの身柄はカイラ人の〈出口のない道〉のひとつイルサル収容所へ。
⑥奪回作戦中、収容所の生命抑圧器が破壊された際のショックで動けないグッキーをトモパト人が殺害。
……となるのだが。

トモパト人は、かつてロベルト・フェルトホフがスペーススリラー『星獣からの挑戦』で生み出した種族で、通常拘束着のようなものを着用しており、脚でアレコレ日常活動をこなすのだが、ひとたび拘束着を脱ぐと、微細な繊維のようなものか寄り集まった触手のような腕で戦闘ロボットすら破壊するという……。
それが、駆けつけたアトランの目の前で、グッキーにむかって振るわれた。顔や上半身ズタズタにされた、とルーカスは描写している。トモパト2名はTARAの分子破壊銃で触手1本のみ残して消滅。そしてグッキーは、抱き上げたアトランの腕の中で、ぴくん、と身じろぎして、ひと言もなく息絶えた。
遺体から立ちのぼった渦状銀河のプロジェクションは〈出口のない道〉を超えて広がり、近傍で待機していた《トーラ》からも観測されたという――。

これは酷い。ご丁寧に巻末の次号予告では、ロナルド・テケナーまで引き合いに出して、死を明確にする事象が生じたと書いている。
#ちなみに、テケナーの死の瞬間の描写はなかった。遺体が回収されたとも聞かない。
#着用者の死と細胞活性チップの回収を示す渦状銀河のプロジェクションのみである。

あまりにあまりな惨状に、公式フォーラムでも非難囂々の嵐で、いろいろと新記録を達成しているらしい(笑)
ある程度予期していたと思われる反応に、クラウス・フリックが「今日の草案打ち合わせでも議題になるよ」とかコメントつけたりしている。

で、信じて待つことにした理由だが。ほんのささやかな光明にすぎないが。

1 今年はダールトン生誕100年である。

お祝い記事や記念企画、ダールトン実録本などもろもろやっている最中に、彼が生み出した最も愛すべきキャラクターを、これだけ意味の無いタイミングで、なんの活躍もなく殺してしまうようなことは、いまのローダン・シリーズがどれだけ切羽詰まっているとしても、さすがにしないだろう、というただの希望的観測である。

2 ルーカスのインタヴューでの発言

最近、Perrypediaでは新刊ごとに作家インタヴューを掲載している。インタヴュアーはローダン・ミニシリーズ等にも執筆している作家ロマン・シュライファーで、わたし的に言う「オーストリア組」で本話の著者レオ・ルーカスとも親しい(はず)。
冒頭でルーカスは、「37年ローダン読んできたけど、もうやめるよ」と言うべきか、「これはフェイクなんだろ? どうやって解決するつもりなんだい?」と言うべきか、と悩むシュライファーにこたえて、

いまやめるのは、いささか、あー、性急にすぎる(überhastet)と思うね。

と述べている。すでにこの時点(7月2日)でフォーラムはe-ブック版を読んだファンの反応でえらいことになっているのはルーカスも承知しているし、当然ネタバレになることは口にできない。
ハヤマラナイデネー、というセリフを、これまた希望的に読み替えてみたい。

3 フリックの公式ブログでの発言

7月3日付け編集部ブログにおいて、クラウス・フリックは本話を取りあげている。物議をかもすことはわかっていた、とも。そして記事の最後を、

多くの読者が、年内にもう一度この巻を手にとることになるはずだ。

と結んでいる。年内……3100話は来年1月8日刊行である。つまり、サイクル終盤に、本話につらなる何事かが起きることになる。
いや、カイラ人の下働きのはずだったトモパト両名の、わけわからん暴走の理由がわかるだけかもだがっ!

4 登場人物紹介にグッキーはいない(オイ

本話冒頭の主要人物紹介にグッキーの名はない。だから、アレはグッキーじゃないんだよ!(な、なんd(ry
というか、殺害現場に唐突に動けないイルトがいただけで、能動的な行動もセリフも一切ない。だから、あれはクローンじゃないかというハナシが出てくるわけで。
むろん、アルコンの〈鉛球〉をどうにかしたい→アトランの身柄が欲しいカイラ人には、グッキー・クローンを殺してみせるメリットはないのだが……。殺すため以外でつくってた(スープラメンタムがらみとか)のをトモパトに奪われた、とかさあ……いや暴論なのはわかってるけど。


どれもこれも、結局は願望のフィルターがかかった内容でしかないのだが。
信じて待つ、というか、祈るような気持ちではある。どんだけ「おい、なんだよそれ!」という顛末であってもいい。生きててくれよ、グッキー……。

ハヤカワ版含めると、42年ローダン読んでるけど、やめちゃうぞ?w

以下余談:
アトラン激オコで復讐に走ってナニしそうだかわかんない、ってブリーが心配してるけど。
個人的には、それはキミの役目なんじゃないか……?

Posted by psytoh