時間超越 -1-

ハヤカワ版, 誤訳

ハヤカワ版373巻の後半、ウィリアム・フォルツ著「時間超越」 五十嵐訳へのツッコミである。
前回、「必ずやる」と豪語したものの、正直、やめときゃよかったと反省することしきり。
――だって、ものスゴいんだもん。

■135p

ハヤカワ版:
最初からおのれの顔を持っていれば、神と向かいあい、あるいは対峙することもできるのに。
原文:
“Erst dann, wenn wir selber ein Gesicht haben, werden uns die Götter Auge in Auge gegenüberstehen.”

試訳:
「おのが顔を得てはじめて、われらは神々と正面から対峙することがかなうのだ」

元々の文章は、TILL WE HAVE FACES からで、”How can the gods meet us face to face till we have faces?” であると思われる。これだと、「われらが顔を得るまで、どうして神々が正面きって会ってくれようぞ?」みたいな感じがするなあ。ただし、上記作品は刊行が1956年なので、引用元がちがう可能性もあるし、原典読んでないから、会話の前後関係とかもわからない。
邦訳は存在する――『愛はあまりにも若く-プシュケーとその姉』(みすず書房・中村妙子訳)――ので、そこから引っぱったのかも。未確認だからなんともいえないけど、訳文が普段と全然ちがってるしねぇ。

■137-8p

ハヤカワ版:
男はアラスカ・シェーデレーアという名前だった。
/ アラスカ・シェーデレーアはそういう男だった。
/ 男はアラスカ・シェーデレーア……
原文:
Dieser Mann ist Alaska Saedelaere.

試訳:
 その男はアラスカ・シェーデレーア。

281巻「虚無への追放」のときにも思ったが、フォルツの原文活かそうという気がまるっきりみられないのがなんとも。あのときは、原文が右寄せ・左寄せ駆使して跳躍感を出そうとしてたんだっけ。ま、あれは天沼訳か。今回はおなじ文章のリピートを無視したうえ、まるまる削った箇所もある(後述)。

■137p

ハヤカワ版:
男は惑星ペルワルから通商ステーションのボントンに向かったもの。
原文:
geht er in den Transmitter der Handelsstation Bonton, um nach Peruwall zu gelangen.

試訳:
かれは通商ステーション・ボントンで惑星ペルワル行き転送機に乗り込んだ。

直後の原文でも、四時間の遅延をへてペルワルに到着、と書いてあるのに。書いてあるのに。
Um zu 不定詞がわからないはずもない。まさに、なんでこうなった。
……見たいようにしか、見ないからだと、愚考するしだいじゃけどね~。

■138p

ハヤカワ版:
スーツの“運搬者”を
原文:
seinen Träger

試訳:
スーツの装着者を

“運搬者”という言いかたは、後半になってアラスカが考える内容であって、この時点ではまだその表現は適切ではない。ちなみに原語もちがってるから。

ハヤカワ版:
ペリー・ローダンはマスクの男をふくむ、細胞活性装置保持者三名を呼んだ。
原文:
überreicht Perry Rhodan dem Mann mit der Maske einen von drei Reservezellaktivatoren, und erhebt ihn damit in den Kreis der relativ Unsterblichen.
Dieser Mann ist Alaska Saedelaere.

試訳:
ペリー・ローダンはマスクの男に、三基ある予備の細胞活性装置のうち一基をわたすことで、相対的不死者のサークルに招きいれた。
 その男はアラスカ・シェーデレーア。

いやもう、何をか言わんや。原文を、ちゃんと読んでいないからそうなるのだ。呼んだの? それからどしたの? いまはアラスカの話をしていたよーな気がするんだけど……。
最後の一文は、上述の削除された分。

ハヤカワ版:
おのれが救いのない展開におちいるほど、人々から乖離して、一匹狼になると自覚している。
原文:
Er spürt, daß er sich immer weiter von den anderen Menschen entfernt, daß er unrettbar einer Entwicklung verfällt, die ihn zum Einzelgänger stempelt.

試訳:
(改行)
 かれは自分が他人と乖離していくことを、一匹狼の烙印をしょいこむ流れに救いがたいほど陥っていることを自覚している。

原文を訳して、さらにバラして組みなおしてる……よね?
しかも、なんか意味がちがってきてる……よね?
自覚している……わきゃないか。

ハヤカワ版:
ヒュプトンの銀河につづく次元トンネルに入った。
原文:
bewegte sich auf den Dimensionstunnel zur Hyptongalaxis zu.

試訳:
ヒュプトンの銀河につづく次元トンネルへとむかう。

まだ、入っていないのだ。ここがまちがえたままなので、後で位置関係がおかしなことになる。確か、ツイン=ソルがらみの話でも、似たようなこと書いた記憶があるぞ。

ハヤカワ版:
正常な活動は不可能だ。
原文:
den Flug unter normalen Umständen unmöglich gemacht hätten.

試訳:
通常なら航行は不可能であったろう。

揺れにローリングに加えて、通常なら航行を不可能としたであろう、一連の不可解なエネルギー現象が生ずる。「しかし《ソル》には、闇のスペシャリストがいる!」「飛べる、飛べるぞ!」とつづくわけである(誇張アリ)。ちなみに、「トンネル内の」移動とは、原文には書いてない。

■139p

ハヤカワ版:
 膨張するトンネル内には、吸い込まれた恒星や惑星、破片が大量に存在する。
原文:
Aus den aufgeblähten Dimensionstunneln rasten Sonnen, Planeten und Trümmer heraus.

試訳:
 膨張した次元トンネルから、恒星や惑星やその破片が噴出する。

上述のとおり、いま《ソル》がどこにいるのか、正しく理解していないから、正しい翻訳ができない。だから前後関係がおかしくなって、読者は「?」となる。今回のはまだ、うまくごまかせているクチである。やれやれ。

ハヤカワ版:
 数分前には、ツグマーコン艦の残骸も目撃した。おそらく、ダッカル・ゾーンから脱出しようとしたゼロ守護者たちのものだろう。最近の体験からして、ほぼまちがいないはずだ。
原文:
Vor wenigen Minuten hatte Perry Rhodan das Ende des zgmahkonischen Schiffes miterlebt, mit dem die Nullbewahrer die Flucht aus der Dakkarzone riskiert hatten. Der Terraner stand noch immer unter dem Eindruck des Erleben.

試訳:
 ダッカル・ゾーンからの脱出を敢行したゼロ守護者座乗のツグマーコン艦の最期をペリー・ローダンが目撃したのは、ほんの数分前のこと。いまもなおテラナーはその体験をふりはらえずにいた。

もう、こう言うしかないだろう――嘘書くな。いくら版がちがっても、そこまで内容が異なるわけがない。五十嵐さん、原文ちゃんと読んでるか? 残骸ってなんの話?

■140p

ハヤカワ版:
この問題を説明するのは、容易ではないから。それに、かれらはビロードの目と次元トンネルの崩壊に、夢中になっている。
原文:
denn er bezweifelte, daß sie sich mit diesem Problem auseinandersetzen würden. Für sie war die ganze Sache mit dem Zusammenbruch des Samtauges und des Dimensionstunnelns erledigt.

試訳:
かれらがこの問題に対処するか疑わしかったから。闇のスペシャリストたちにとっては、ビロードの目と次元トンネルの崩壊をもって、万事解決したのだ。

なんか、ローダンは闇スペのことをそうとう莫迦だと思っているようで……。あ、それともローダン自身が口ベタ――なわきゃねーってば(笑)
まぁ多分、erledigt と beschäftigt を読みまちがえたんだろうけど……前後関係も怪しいな。

ハヤカワ版:
 ふたたび、全周スクリーンに意識を集中する。トンネルの開口部が見えてきたのだ。ビロードの目と同じような、ハイパーエネルギー性の穴の輪郭である。
原文:
Auf dem Panoramabildschirm glaubte Rhodan jetzt die öffnung eines Tunnels zu erkennen, aber es konnte sich genauso gut um ein hyperenergetisches Aufrißloch im Samtauge handeln.

試訳:
 ローダンは一瞬、全周スクリーン上にトンネルの開口部を見たと思ったが、あるいはビロードの目内部のハイパーエネルギー性の裂け目であったかもしれない。

es konnte ~ なので、「~でもありうる」だ。この場合は、「(トンネル開口部であるのと)同じくらい、裂け目でもありうる」。スクリーンに映るものをちゃんと理解できない、とさんざん連呼したのは、ここにつながる……かは知らない(笑)

ハヤカワ版:
「ヒュプトン銀河側のトンネルも崩壊するのかな?」
原文:
“Was geschieht, wenn der Tunnel zur Hyptongalaxis ebenfalls zusammenbricht?”

試訳:
「ヒュプトン銀河へ通じるトンネルまで崩壊したら、どうするの?」

トンネル内部前提なので、まるで出口のことのように訳しているが、そうではない。対する回答も、「崩壊はするさ! ただし、われわれが通過した後でな」くらいに訳せば問題なし。

■141p

ハヤカワ版:
「たしかなの?」と、念を押す。
「われわれがついているからな!」
原文:
“Was macht dich so sicher?” fragte er den Spezialisten der Nacht.
“Meine Freunde und ich halten diese Verbindung offen!”

試訳:
「なんだって、そんなに自信満々なのさ?」
「わたしと仲間たちが、接続を維持するからだ!」

まぁ、あえて指摘するほどでもない。それでもニュアンスはだいぶ異なる。

ハヤカワ版:
オルウのグループは、《ソル》が銀河系に帰還したあとも、公会議の駐留部隊との戦いを、援助してくれるにちがいない。
原文:
Schon aus diese Grund hoffte er, daß Olws Gruppe den Flug der SOL in die Milchstraße mitmachen und den Terranern gegen die dort stationierten Einheiten des Konzils beistehen würde.

試訳:
それゆえ、ローダンとしては、オルウのグループが銀河系まで《ソル》に同行し、公会議の駐留部隊との戦いを援助してくれることを期待したい。

これもニュアンスの問題だが。訳文だと、銀河系まで同道することは既定事実みたいだ。

ハヤカワ版:
吸い込まれた恒星の
原文:
einer ausgestoßenen Sonne

試訳:
とびだしてきた恒星の

以下、すべて同様。何度もくりかえすが、《ソル》はまだトンネルに突入していない。トンネルから、ビロードの目内部へと障害物が吐き出されてくるのだ。

■142p

ハヤカワ版:
通常、ブラックホールにのみこまれた恒星は、最終段階凝集体に到達する。しかし、その前にビロードの目が崩壊すれば、反作用エネルギーの影響で、次元トンネルの出口付近を放浪することになるだろう。
原文:
Normalerweise wäre die Sonne direkt zum Ausgangspunkt der Endstufenballung geschluedert worden, aber das zusammenbrechende Samtauge verhinderte diese Entwicklung. Von gegensätzlichen Energien beeinflußt, bewegte sich die gerade aus einem Dimensionstunnel gekommene Sonne scheinbar ziellos vor dem Eingang der sogenannten Rute.

試訳:
通常であれば、次元トンネルからあらわれた恒星はまっすぐ最終段階凝集体の出口へと射出されるはずであるが、崩壊しつつあるビロードの目に阻害され、相反するエネルギーのあおりで、いわゆる《鞭》の根元を前にあてどなくさまよっている。

正直、そのへんのハヤカワ版(と、原書もか)読みこんでないから、訳者陣が、ダッカル次元バルーン、ビロードの目、ルーテ、最終段階凝集体を、どんな関連・位置関係で理解しているかわからんのだけど。それ以前に、例によって時制が読めてないよーだ。

ハヤカワ版:
 ともあれ、いま船とブルーの恒星のあいだには、不可視のエネルギー結合があった。
原文:
Zwischen dem Schiff und der blauen Sonne bildete sich jetzt eine Achse aus unsichtbaren Energien.

試訳:
 艦とブルーの恒星のあいだには、現在、不可視のエネルギーからなる“軸”が存在した。

要するに、そこを中心に「ふりまわされ」かねない重心……なのだと思うが。
ああ、147pじゃ「軸」って訳してるなあ。ってか、そこの描写読むと、軸じゃなくて、スポークみたいな(笑)よくわからないエネルギーの枷だったりするのか……。

ハヤカワ版:
これまで《ソル》を救ってきた異人たちが、次の段階ではカタストロフィの原因になるかもしれない。
原文:
Wenn die Wesen, die das Schiff bisher gerettet hatten, sich nicht mehr über die nächsten Schritte im klaren waren, drohte der SOL eine Katastrophe.

試訳:
これまで《ソル》を救ってきた異人たちに、次のステップがわからないとなれば、待つのは破滅ばかりだ。

少々意訳。責任転嫁は感心しないなぁ(笑)

■143p

ハヤカワ版:
「われわれの目標はヒュプトン銀河だ。
原文:
“Unser Ziel ist der Tunnel zur Hyptongalaxis.

試訳:
「われわれの目標はヒュプトン銀河への次元トンネルだ。

……そろそろ、気づこうよ。ってか、後ろはふりかえらない主義なんかい?
松谷さんじゃあるまいし、初見ってこたぁないだろう。

ハヤカワ版:
 異人たちに《ソル》の運命をゆだねていいのだろうか……?
原文:
Keines der fremden Wesen, die jetzt die Verantwortung für das Schiff hatten, reagierte.

試訳:
 現在《ソル》に責任をもつ異人たちは、ひとりとして反応しなかった。

ローダンを哀れとおぼしめしたのか?(爆) もう、ゆだねちゃってるからwww

ハヤカワ版:
トンネルをぬけるチャンス
原文:
eine Chance, den rettenden Tunnel zu erreichen.

試訳:
救いのトンネルにたどりつけるチャンス

くどいかな、トンネルネタ。でも、これ以外にも何回も出てるのに、ねぇ。
もう意図的に、トンネルに入ったことにしてしらみつぶしに修正かけたとしか。なんでやねん。

ハヤカワ版:
「いまはかれらにまかせましょう」と、声をかける。
原文:
“Du darfst jetzt nichts tun, was die Schwierigkeiten noch vergrößert!” warnte der Wissenschaftler.

試訳:
「難題をいっそう大きくするようなまねはなさいませんように」と、クギをさした。

……娘婿も案外、冷たかったようだwww その前の原文も、「苦悩を察した」ではなくて、「胸中を読んだ」である。

■144p

ハヤカワ版:
 ローダンはこの混沌のなかで、船のコースを変更するのがどれほど困難か、充分に認識していた。しかも、《ソル》はいま、恒星の強力な重力につかまっているのだ。
原文:
Rhodan besaß genügend Erfahrung, um auch in dem hereibrechenden Chaos einen Kurswechsel des Schiffes registrieren zu können. Die SOL bewegte sich jetzt auf die Sonne zu und gab der unbeheuren Gravitationsströmung nach.

試訳:
 ローダンはわきおこる混沌のただなかでも、船のコース変更を察知できるだけの経験を積んでいる。《ソル》はいま、恒星へとむかい、怪物的な重力流につかまった。

sich auf etw. zubewegen(分離動詞)で、何かへ方向をさだめるのは、138pの次元トンネルがらみでも取りあげた表現。うちの独和にはなぜか載っていないが、オンライン辞書等だとすぐ検索にひっかっかる。
要するに、オルウの指示にしたがって、ドブラクは何も言わずに《ソル》を転進させたのである。

ハヤカワ版:
このままでは恒星に墜落するぞ!」
原文:
Wir stürzen in die Sonne!”

試訳:
恒星に墜落するぞ!」

というわけで、「このままでは」なくて、「転進した」から墜落しそうなわけだ。
想定した状況と訳文が合わなかったら、想定に誤りがあると考えようよ……。

ハヤカワ版:
《ソル》生まれよりも、テラ生まれの乗員のほうが、より不安をつのらせているようだ。いずれにしても、危険な兆候である。自分にもしプレコグニション能力があれば、もっと早く危険の匂いを察知できたのだろうが。
原文:
Seltsamerweise war diese Unruhe bei jenen, die an Bord des Schiffes geboren waren, stärker als bei den Erdgeborenen. Rhodan sah darin ein Indiz für die wachsende Gefahr. Die SOL-Goborenen besaßen, zumindest was “ihr” Schiff betraf, die unbewußte Fähigkeit der schwachen Präkognition; früher hätte man vielleicht gesagt, daß sie die Gefahr witterten.

試訳:
奇妙なもので、地球生まれよりも艦内で生まれたものたちのほうが、より不安をつのらせている。ローダンは危険の兆候と見た。《ソル》世代は、“かれらの”船に関するかぎりにおいて、無意識の、微弱な予知能力をもっている。古い言いまわしを使えば、かれらは危険に鼻がきくのだ。

これも想定の問題である。都合が悪いから、後半ばっさり削ったのかい? そのくらいなら、ソラナーが主語だとわかりそうなものだが。

ハヤカワ版:
乗員はそれに対して無力であるという事実を、うけいれることができないのだ。論理的に考えれば、三次元生物には手出しできない事象だとわかるのだが。
原文:
Kein logisch denkender Mensch an Bord konnte das akzeptieren, doch das war im Grunde genommen bedeutungslos, denn die Logik eines dreidimensionalen Wesens war zwangsläufig eine andere als die eines überdimensionalen.

試訳:
論理的に考えれば、乗員の誰にとってもうけいれがたいことだが、根本的に無意味でもある。三次元生物の論理は、高次元生物のそれとは必然的に異なるのだから。

この場合、乗員たちがうけいれがたいのは、「目標からそれていくこと」。んで、後半部分は、「論理的に考えても無駄無駄、だってここは三次元生物の出る幕じゃないんだもの」である。

■145p

ハヤカワ版:
 巨船にかかる負荷を考えると、まだ乗員は無防備にひとしい。
原文:
Die Belastungen, denen das Schiff in diesen Minuten ausgesetzt war, konnten nicht mehr gemessen werden. Viellieicht, dachte Rhodan mit einem Anflug von Sarkasmus, war das auch ganz gut so,

試訳:
 この瞬間、艦にかかる負荷は、もはや計測もできない。あるいはそれで良かったのかもな、とローダンはやや皮肉に考えた。

データがあったら狂っちゃうヒトもいそうだしねー、というお話。無防備って、それどっから出てきた単語なんじゃろ。

ハヤカワ版:
しかも、こうしているあいだにも、ビロードの目と次元トンネルは膨張をつづけているのである。
原文:
Rhodan wußte, daß sie sich irgendwo zwischen dem Samtauge und den letzten, noch immer aufgeblähten Dimensionstunneln befanden.

試訳:
ローダンにいえるのは、ビロードの目と、なおも膨張している最後の次元トンネルとのはざまのどこか、ということだ。

現在のポジションの話のつづきである。まあ、まるでわかっていない、と言ってるのと同じではあるのだが。あと、ビロードの目が膨張するの?

ハヤカワ版:
恒星の“旅行”が成功すれば、《ソル》にもチャンスがある……要するに、そういうことなのだろう。
「《ソル》はかならず自由をとりもどすでしょう。わたしはそう確信しています」と、ワリンジャーがいった。
原文:
Immerhin war die rasende Fahrt der Sonne gebremst, ihr winziger künstlicher Begleiter bekam auf diese Weise eine Chance.
“Ich glaube, daß wir wieder von ihr loskommen können”, sagte Wariger.

試訳:
ともかく、恒星の猛進に衰えがみえ、そのちっぽけな人工の随伴者にもチャンスが訪れた。
「どうやら、離脱できそうですね」と、ワリンジャー。

正確には、突進にブレーキがかかった、である。なぜかは、知らない。
不安定な挙動でも、速度が落ちれば、周回軌道から(比較的)安全に離脱できる――要するに、そういうことなのだろう(笑)

ハヤカワ版:
どうやってヒュプトンの銀河を探知しているのか
原文:
auf welche Weise diese Wesen mit dem Tunnel zur Hyptongalaxis in Verbindung standen,

試訳:
どうやってヒュプトン銀河に通じるトンネルとコンタクトをたもっているのか

後半も、正確にそこへ向かっている、じゃなくて、明らかにいまこの瞬間にも維持している、である。トンネルがつぶれないことから、それとわかるわけだ。

■146p

ハヤカワ版:
 ドブラクはふたたび加速命令を発したようだ。これが最良のタイミングなのだろう。ケロスカーがそういう面でミスをするとは思えないから。
原文:
Rhodan fragte sich, wann Dobrak den Befehl zur erneuten Beschleunigung geben würde. Zweifellos wartete er auf den günstigsten Augenblick. Rhodan litt unter der Vorstellung, daß der Kelosker den richtigen Zeitpunkt verpassen könnte.

試訳:
 ドブラクはいつ、再度の加速命令を発するだろう。最良の瞬間を待ちうけていることはまちがいない。もしケロスカーがタイミングを逸したら……そう想像すると、ローダンはぞっとした。

トンネルじゃないけど、まだ、再加速してないぞ。
最後の文章は、正確には「……という想像に苦しんだ」。日本語にすると、想像しがたい、みたいで意味がちがって見えるなあ(笑)

ハヤカワ版:
インターカムからは、乗員の批判的な意見も聞こえてきた。各セクションの責任者に、ペリーをわずらわせる意図はないのだが、一般乗員はインターカムを使って、自由に情報を交換している。
原文:
über Interkom erlebte die gesamte Besatzung der SOL diese kritische Phase mit. Niemand unter den Verantwortlichen, am allerwenigsten Perry Rhodan selbst, kam auf den Gedanken, die Besatzung durch Abschalten des Interkoms von den Ereignissen abzuschließen. Das, was jetzt geschah, ging alle an.

試訳:
 インターカムを通じて、《ソル》の全乗員がこの危険な段階をともに体験している。責任者たちの誰ひとりとして、また誰よりもペリー・ローダンその人が、乗員たちにインターカムを切れと命ずることなど考えもしなかった。すべてがリアルタイムで伝わっていた。

ペリー・ローダンを筆頭に責任者たちの誰ひとりとして、くらいでいいかなあ。
直訳すると「インターカムを切ることで乗員たちを事件から遮断しようという考えにいたらなかった」。
あと、リアルタイムは完全に意訳。

ハヤカワ版:
 乗員の多くは船内に家庭を持ち、こどもから老人までが“暮らして”いた。
原文:
Die SOL war mehr als jedes andere Schiff eine Heimat für viele ihrer Besatzungsmitglieder. An Bord lebten Kleinstkinder und Greise.

試訳:
 《ソル》は、ほかのどんな船よりも、乗員の多くにとって“故郷”であった。幼児から老人までが艦内で暮らしている。

強調するポイントがちがうだろう。Heimatを「家」と訳さにゃならん理由があるのか? 最後のほうでも、新たな故郷、とやらずに「新しい家」とやってるから、カリプソがなんだかホームレスみたいだぞ?

ハヤカワ版:
 ローダンはこの種の発言の心理的側面について考えた。おそらく、ツグマーコン人に特有な心理ファクターによるものなのだろう。かれらの権力願望は病的なまでに強い。だからこそ、こういう言葉を口にすることで、ポジティヴな効果が得られるのだ。
原文:
Rhodan dachte flüchtig an die psychologischen Folgen, die diese Entwicklung für die Zgmahkonen haben mußte, die sich plötzlich in der Rolle von Eingeschlossenen wiederfinden würden. Wahrscheinlich ging von diesem Ereignis eine heilsame Wirkung aus. Die Zgmahkonen würden sich wieder auf ihre positiven Werte besinnen und begreifen, daß ihr ungeheuerlicher Machtanspruch krankhaft gewesen war.

試訳:
 ローダンは刹那、幽閉されたという展開がツグマーコン人にもたらす心理学的帰結について考えた。おそらく、この事件は治癒作用を発揮するだろう。かれらはポジティヴな価値観にたちかえり、怪物的な権力志向は病であったと理解するだろう。

いやまあ……ローダンの考えも超甘ちゃんというか超きれい事というか、正直アリエネーだが。
ここまで内容がちがうと、いっそ想像力に乾杯だのぅ。

ハヤカワ版:
「では、恒星がトンネル開口部に接近したところで、離脱を試みる」
原文:
“Sobald wir auf der dem Tunnel zugewandten Seite der Sonne ankommen, machen wir einen Ausbruchversuch”,

試訳:
「艦の恒星周回軌道がトンネル側に入りしだい、離脱を試みる」

遠心力も利用したいところ……なのかな。

■147p

ハヤカワ版:
 船の速度を考えると、いくらドブラクでも、そのポジションに達した瞬間に報告はできない。
 しかし、セネカとセタンマルクトは計算を終えており、
原文:
Bei der hohen Geschwindigkeit des Schiffes dauerte es nur wenige Augenblicke, dann hatte es die von Dobrak als günstign bezeichnete Positon erreicht.
SENECA und das Shetanmargt hatten bereits entsprechende Befehle erhalten.

試訳:
 艦は高速だったため、ドブラクが最適としたポジションに到達するまで、わずか数瞬しかかからなかった。
 セネカとセタンマルクトはあらかじめ即応した命令を与えられており、

うん……まぁ、わかりやすい言いまわしにしようと努力したことは認める。フォルツの文章は、訳すときなんとなくブツ切れな感じしやすいしね。
原文と内容はぜんぜんちがうけど、誤訳と言い切るのもちょっとなぁ、ってやつだ。

ハヤカワ版:
 状況は容易にイメージできる。巨船とブルーの恒星は、見えない軸を中心にして相互にめぐっており、その距離はしだいに開きはじめているはずだ。
原文:
Rhodan konnte sich beinahe bildlich vorstellen, wie die unsichtbare Achse zwischen dem Schiff und der blauen Sonne allählich länger wurde. Sie hielt das Schff jedoch nach wie vor fest.

試訳:
 ローダンには容易にイメージできた。巨船とブルーの恒星のはざまの見えない軸がしだいに伸びていくのが。しかし、それは依然、船をがっしりととらえていた。

原文の allählich は文脈から見て allmählich の誤植。
最後の文章をちゃんと訳しておかないから、次の段落がぜんぜん逆の意味になってしまっている。

ハヤカワ版:
 だが、次の瞬間、第二の恒星が出現した! この天体はヒュプトン銀河側のトンネルから吸いこまれ、《ソル》の“横”を通過していく。その重力圏の影響を強くうけるようになれば、船はずたずたになり、分解してしまうだろう。
原文:
In diesem Augenblick kam der Zufall dem bedrohten Schiff in Gestalt einer zweiten Sonne zu Hilfe. Dieser Himmelkörper brach aus dem noch offenen Tunnel zur Hyptongalaxis hervor und raste an der SOL vorbei. Die dabei wirksam werdenden Kräfte reichten aus, um das Schiff von seiner energetischen Verbindung loszureißen un zu befreien.

試訳:

 その瞬間、偶然が第二の恒星の姿をとって救いの手をさしのべた。この天体はなおも健在のヒュプトン銀河に通ずるトンネルから吐き出され、《ソル》近傍を通過した。その際に働いた力は、船を第一の恒星との結びつきからもぎとり、解放するに充分だった。

試訳は、少々意訳である。第二の恒星がはたす役割が真逆なのは明確。
そして、ここがまちがっているので、さらに次の会話もおかしくなっているのだ。負のスパイラルである。

ハヤカワ版:
「ドブラクはこの恒星がいまどうなっているか、正確にわかっていますよ。信じられないほど正確に」
「そうだな」ペリーは曖昧に応じた。
(中略)
 ワリンジャーにしても、不満の色はかくせない。
「で、どういう状況なのだ?」と、結局ケロスカーにたずねる。
「順調だ」計算者はそれしかいわない。
原文:
“Dobrak kann unmöglich gewußt haben, daß diese Sonne gerade jetzt auftauchen würde”, sagte er.
“Nein”, bestätigte Rhodan gegen seine persönliche Überzeugung.
(…)
Waringer war nicht zufrieden.
Wußten Sie es?” bedrängte er Dobrak.
“Ich glaubte daran”, erwiderte der Kelosker schlicht.

試訳:
「ドブラクに、わかっていたはずはありません。ちょうどいま、この恒星があらわれるなんてことが」
「そうだな」内心、逆を確信していながら、ローダンはうなずいた。
(中略)
 ワリンジャーは満足しなかった。
「知っていたのか、きみは?」と、ドブラクにせっついた。
「信じていた」が、そっけないこたえだった。

148pまで食いこんでしまったが、こーゆー会話なのである。奇跡のように第二の恒星があらわれたことが前提にないと、会話自体が成り立たない。なので、なんだかよくわからない内容になってしまっている。

■148p

ハヤカワ版:
サート・フードを装着しているので、表情はわからない。
原文:
Er ließ die SERT-Haube herabgleiten und befestigte sie über seinem Kopf.

試訳:
かれはサート・フードを引きおろして装着、固定した。

ハヤカワ版:
 すべてがうまくいけば、このテラ宙航士がこの巨船を、ふたたび完全に掌握できるようになるだろう。
原文:
Bald, so drückte er durch diese Handlungsweise aus, würden sie sich in einer Umgebung wiederfinden, wo ein terranischer Raumfahrer sein Schiff noch auf seine Weise steuern konnte.

試訳:
 じきだ――と、その動作は語っていた――もうすぐ、テラ宙航士の流儀で宇宙艦を飛ばせる環境へもどるのだ!

びっくりマークを勝手につけるのは、あまり好きくないのだが。こういうとこくらいよろしかろ。しかし、普段口数の多いコスムの珍しくも無言の主張は、訳者には届かなかったようだ。残念。

…………。
ぜーはーぜーはー。ここまででやっと1章である。
元々は、Zeitloseをなんと訳しているか確認するためにペラペラめくりはじめたのだが……。正直、ここまでの大仕事になるとは、本気で予想外だよっ!! 『太陽系帝国の守護者』あたりから何年たってると思ってるんだ……。
この調子だと、267pまでたどりつくのはいつになることやらorz

Posted by psytoh