クルト・ラスヴィッツ賞2021年ノミネート作

ドイツSF

3月30日付けのラスヴィッツ賞公式サイトで、2021年の同賞ノミネート作が発表された。ドイツ語圏で2020年中に初版刊行された作品が対象となる。

今年に入って一時サイトの更新が滞っていたのでヤキモキしていたのだが、実際はスケジュール通りに諸事進展していて、3月末の公表という事前告知に沿った公開となった。
230名の有権者への通知も完了し、今後の予定としては、5月31日までの選考期間を経て6月に受賞作を発表。授賞式は11月6日、ドレスデンで開催(予定)のSFコンベンション〈ペンタ=コン〉枠内で執りおこなわれる……んだけど、昨今のドイツの状況だと、この手のイベントの実施はまだまだ現実味が見えてこない気もする。

昨年(2020)の受賞作一覧もまだちゃんと掲載していないのだが、いま、正直時間的にあまり余裕がないので、さくっとリストだけアップしてしまおう。

長編部門 Bester deutschsprachiger SF-Roman:

Zoë Beck / Paradise City / 楽園都市
Gabriele Behrend / Salzgras & Lavendel / 厚岸草とラヴェンデール
Christoph Dittert / Fallender Stern / 落星
Andreas Eschbach / Eines Menschen Flügel / ヒトの翼
Tom Hillenbrand / Qube / キューブ
Sameena Jehanzeb / Was Preema nicht weiß / プレーマが知らないこと
Marc-Uwe Kling / Qualityland 2.0 / クオリティランド2.0
Heribert Kurth / Unter den Sternen von Tha / ターの星の下で
Michael Marrak / Anima ex Machina / アニマ・エクス・マキナ
Uwe Post / E-Tot / e-デッド

『落星』の作者ディッテルトは、現在ローダンの草案チームの一方、クリスティアン・モンティロンの本名。
『ヒトの翼』の作者エシュバッハは、言わずと知れた同賞の常連。昨年のローダン本に続いて連覇なるか。
『キューブ』の作者ヒレンブラントは、ローダン2000話の翻訳も手がけた赤坂桃子氏によって邦訳された『ドローンランド』が2015年のラスヴィッツ賞、本作の前編『ホログラマティカ』が2019年のドイツSF大賞を受賞している。
クリングの『クオリティランド2.0』は、そのまま、2018年のドイツSF大賞受賞作『クオリティランド』の続編。
『アニマ・エクス・マキナ』の作者マラクは、2000年刊行の『ロード・ガンマ』がラスヴィッツ賞・ファンタスティーク大賞のダブルクラウン受賞に加え、SF-Fan.deの読者投票オールタイムベスト1位に輝いている。
『e-デッド』の作者ポストも、2018年の『ヴァルパー・トンラッフィルと神の人差し指』をはじめ、複数の受賞歴の持ち主。
それ以外にも、ガブリエレ・ベーレントは長編・短編双方にノミネートされるなど、錚々たる面々である。

……実は『落星』と『ヒトの翼』はどちらも発売日にKindle版を購入していたのだけど、見事に積ん読状態である。ソシャゲ断ちするか……(オイ

短編部門 Beste deutschsprachige SF-Erzählung:

Galax Acheronian /Verloren auf Firr’Dars / フィル・ダースで失踪 (『ハイパー・オービス』Hyper Orbis 収録)
Gabriele Behrend / Meerwasser / 海水 (『エリダヌス座εの友人だち』Unsere Freunde von ε Eridani 収録)
Christian Endres / Der Klang sich lichtenden Nebels / 発光する雲の音色 (『緑の惑星――気象変動した未来』Der grüne Planet – Zukunft im Klimawandel 収録)
Kai Focke / Gastropoda galactica / ガストロポダ・ガラクティカ (『エイリアン・ワルツ』Das Alien tanzt Walzer 収録)
Heidrun Jänchen / Mietnomaden / 借家放浪者 (『緑の惑星』収録)
Axel Kruse / Grassoden / 芝 (『2101――僕らの将来』2101 – Was aus uns wurde 収録)
Hans Jürgen Kugler / Die Insulaner / 島の人々 (『緑の惑星』収録)
Christian Künne / Friedensfahrt / ピース・レース (『シリウス・シティの叛乱』収録)
Thorsten Küper / Unsere Freunde von ε Eridani / エリダヌス座εの友人だち (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Frank Lauenroth / Delter / デルター (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Michael Marrak / Insomnia / 不眠症 (『ラザルス家』Das Haus Lazarus 収録)
Uwe Post / Terra Halbpension / 賄い付下宿テラ (『エリダヌス座εの友人だち』収録)
Carsten Schmitt / Wagners Stimme / ワグナーの声 / (『知性はいかほど人工的か?』Wie künstlich ist Intelligenz? 収録)
Angela und Karlheinz Steinmüller / Marslandschaften / 火星の情景 (『エクソダス41号』Exodus 41 収録)

作品内容とは関係ないが、ガストロポダ(腹足綱)とは、要するにカタツムリやナメクジを連想していただけばよろしいかと。ローダン・シリーズでも、すでに登場しているダルゲートとか、近々登場する奇蹟のエンジニア種族ナックなどは“ガストロポイド”とも表記される。
シュミットの作品が収録された『知性はいかほど人工的か?』は、Twitterでローダン公式などをフォローしている方は目にしたこともあるだろう。編者はクラウス・N・フリック。現在のローダン・シリーズ統括責任者である。
シュタインミューラー夫妻がまだ現役でご活躍なのは、一ファンとして嬉しい。

……通例ならこの後、国外作品部門(独訳初版が2020年刊行)の紹介をするのだが、遺憾ながら今回は割愛する。ご多分に漏れず、中国SF(劉慈欣の三体がらみの短編集収録作)やらアラビア語からの独訳まであって、ちょっと原題の確認とかめんどくs……時間がかかりそうなので、機会を改めて、ということで(汗)

■ラスヴィッツ賞公式サイト:www.kurd-lasswitz-preis.de

Posted by psytoh