訃報:H・G・エーヴェルス

作家情報

H・G・エーヴェルス (H. G. Ewers)
1930.01.01 – 2013.09.19

9月23日付け公式サイトに掲載されたニュースによると、元ローダン作家のH・G・エーヴェルスが、去る9月19日、急性心不全のため死去したとのこと。享年83歳。

本名ホルスト・ゲールマン(Horst Gehrmann)。1930年、現ザクセン=アンハルト州のヴァイセンフェルス(1945年から旧東ドイツ領)に生まれる。商業系の教育をうけ、当初、自動車ディーラーに勤務。薬学の勉強をしたり、ギムナジウムの講師を勤めたりしたが、1961年、ベルリンの壁建設の直前に西ドイツに亡命。すでに翌1962年にはエーヴェルス名義の作品が発表されているという。70年代以降、バーデン=ヴュルテンベルク州ヴェイル・アム・マインに居をかまえ、そこが終の住処となった。

ローダン・シリーズとの関係は、1964年刊行の惑星小説5巻『災いだらけの遠征隊(Die verhängnisvolle Expedition)』から。翌1965年にはヘフト198話「最後の砦」からレギュラー作家として執筆を開始。以後、1726話をもってレギュラー引退を表明するまで、ほぼ1割~2割を担当するペースで執筆を継続した。ヘフト最終担当話はゲスト作家として執筆した2110話「ヴァッサーマルの守護霊」。最後の“参加”は、2012年5月刊行のヘフト2646話に掲載された、連作短編Stellarisの29話であった。

かなり多作な人で、ローダン・ヘフトの総執筆話数は歴代2位の251話。(1位はマールの253話)
エーヴェルスがフォルツを抜いて暫定1位になったのはわたしが原書読みになってまもなくのこと(1300話直前)で、そのせいか、なんとなく最多執筆作家~みたいなイメージがあったのだが、実は1350話あたりで、すでにマールに抜かれていたのだった。そうねー、あの頃マールも草案コンビの一翼としてやたら書きまくってたからねー(^^;

他に、旧アトラン・ヘフトで93話、惑星小説では60巻、その他記念号等に短編が8本。ローダン関連以外でも、『宇宙船オライオン』やファンタジー・ヘフト『ドラゴン』等に参加していたり、Commander Scott(キャプテン・ケネディのドイツ語版)の“ドイツ語オリジナル”を2編(グレゴリィ・カーン名義)書いてたりと、けっこうな量がある。

そしてまた、エーヴェルスといえば、「プロット無視して大活躍のスーパーキャラ」だろう。
オマール・ホーク、テングリ・レトス、パトゥリ・ロコシャン、いまのハヤカワ版のあたりだとロルヴィク/ア・ハイヌの凸凹コンビや宇宙船長ガイ・ネルソンと枚挙にいとまがない。わたしが原書を読みはじめた頃には、シャギィことアストラル漁師ギッフィ・マラウダーと“カッツェンカットの妹”バス=テトのイルーナが、エレメントの支配者の拠点を(それと知らぬまま)ぼっこんぼっこんにしたあげく、アトランたちの冒険する〈深淵の地〉にまであらわれて大暴走していたものだ(この暴走はタルカン宇宙にまで続くw) 。アトラン・ヘフトにおいても、宇宙探偵アルゴンキン・ヤタや“モジュール・マン”ゴマン・ラルゴなど、時空を超えて大暴れするキャラクターには、実にことかかない。それら「草案作家の恐怖」とまで言われたキャラクターの多くは、惑星小説に小シリーズを持っていたりして、どうやらドイツの読者には熱狂的に迎えられたらしい。
ただ、後期には(おそらく現編集長クラウス・フリックから)「勝手なキャラ禁止令」が出されたらしく、作風がおとなしくなってしまったのは残念である。サイノと火星人コンビは個人的にはイマイチ好きになりきれなかったのだが、ああいった暴走キャラとかエピソードから、おもしろい展開が生まれたりしていたのはまちがいないのだ。かれの引退後、シリーズのストーリーからそういった「振れ幅」が消えてしまったことは実に残念。

エーヴェルスが去り、現在のハヤカワ版あたりを執筆している作家は、すべて鬼籍に入ってしまった。とゆーか、1000話以前にチーム入りした経験のある作家で、存命なのはコンラッド・シェパードだけである。50年以上つづいているシリーズであるからには、やむをえないことではあるのだろうが……。

さよなら、エーヴェルス。草案作家でなくてよかったと思うくらい、楽しかったよ。

■公式サイト:H. G. Ewers ist verstorben
■Perrypedia:H. G. Ewers

Posted by psytoh