亜鈴船の旅は終わらない

ローダン

11月15日発売の第12話「キューブが落ちる」をもって、ミニシリーズ・ミッション《ソル》は閉幕を迎えた。多くの犠牲を払ったが、これでローダンが元の時間へ帰還して、さてその後500年、《ソル》はどうなってるのやら~とやや方向のちがう期待で開いた最終話。
もはや伝説の船《ソル》の旅路は、予想外の展開をむかえたのだった(笑)

  1. Kai Hirdt / Das Raumshiffgrab / 宇宙船の墓
  2. Bernd Perplies / Die Althanos-Verschwörung / アルタノスの陰謀
  3. Dietmar Schmidt / Gefährlicher Pakt / 危険な契約
  4. Ben Calvin Hary / Welt des ewigen Todes / 永遠の死の惑星
  5. Olaf Brill / Strafkolonie der Ksuni / クスニの懲罰コロニー
  6. Hermann Ritter / Das Orakel von Takess / タケスの宣者
  7. Marc A. Herren / Eine kosmische Bestimmung / 宇宙的天命
  8. Bernd Perplies / Krise auf Evolux / エヴォラクス危機
  9. Ben Calvin Hary / Ins Herz der Finsternis / 闇の中心へ
  10. Olaf Brill / Die Höllenfahrt der SOL / 《ソル》の地獄下り
  11. Dietmar Schmidt / NEUBEGINN / 《新生》
  12. Kai Hirdt / Der Würfel fällt / キューブが落ちる

ヘフト本編2998話で、〈劫火〉の拡大を阻止するため、騎士のオーラのパチモンを着用せんと超知性体ゲショドの補助種族が用いる転送機〈ショドの鏡〉をくぐったペリー・ローダンは、なぜか奇妙な作用ではるか彼方の宙域へ転送され、外界と隔絶された〈漂着者の谷〉に出現する。そこには過去の記録をうしなったソラナーの末裔が暮らしており……2つの“神殿”がソル=セルであることをローダンは知る。谷の秩序を乱すものとされたローダンは、協力するわずかなものたちとともにソル=セル2を再起動、離陸する。
――というのが、ミニシリーズ第1話(既報)。

〈漂着者の谷〉を離床したソル=セル2から、ローダンは即座に特徴的な恒星配置を発見。F2型巨星8個が均等間隔でキューブ状に配列されたそれが示すのは、コスモクラートの工廠惑星、〈白い惑星〉エヴォラクス!

エヴォラクス(Evolux):
〈白の惑星〉エヴォラクスはタレ=シャルム銀河に存在するコスモクラートの工廠惑星である。初登場は2450話「エヴォラクス」(フェルトホフ)。
一辺あたり69億キロの距離で配置された8つのF2型恒星の立方体の中心に位置する。直径14万キロ、質量は木星の77倍、ただし表面重力は1.05Gという、いろんな意味で規格外、人工の世界であることがうかがえる。地球の125倍の面積をもつ地表はハイパー物理学的フィールドによって無数のセグメントに分割され、さまざまな種族が各種工程のため働いている。首都は〈天嶮都市〉ベリオサで、シーケンス評議会が惑星全土を管理する。
新銀河暦1346年、タレ=シャルム銀河の負の球体“反転”を目撃して2000万年前から帰還した《ジュール・ヴェルヌ》は、コスモクラートの使者が使用する青い転子状船が建造されているのを目撃している……のだが、当時、能率アップのため総監督として猛威をふるっていたコスモクラートの人造人間ディラメシュとひと悶着あって、これをエヴォラクスから追放している。
無茶なブラック業務を押しつけられなくなって感謝したヤコントらエヴォラクス諸種族は、《ジュール・ヴェルヌ》をいろいろいじくりまわしていらん機能をてんこ盛りにしてくれたのだが、それは今回の物語とは関係がない。ディラメシュのリターンマッチでもなかった(笑)

シーケンス評議員コルウィン・ヘルタマーとコンタクトするも、《ソル》本体の行方や、乗員の子孫が孤立した状態の理由のわからない状態で、ローダンは一旦エヴォラクスを離脱。インドクトリネーターで協力者たちに催眠教育を施す一方で、消去された航宙日誌ログブーフとは別に、艦長フィー・ケリンドによる草稿の個人的なバックアップを発見。
……このあたりで、《ソル》がタレ=シャルムにいるのは、遠征自体がこれまでヘフト本編で言われたような“目的地不詳”ではなく、アルゴリアンのクルカリャン・ヴァランティルの委託を受けたローダン自身の指示であったことが明らかになる、のだが。

ヴィラメシュ、ドムラトと、かつてヘフト本編に出てきた島宇宙での中間ストップを経て、30年の時間をかけてたどりついた目的座標には〈法〉付与機《ケオス=タイ》の姿が。強制接収されそうになったり、エヴォラクスでようやく邂逅したヴァランティルが依頼のことなど何も知らないとけんもほろろなど、踏んだり蹴ったりである。
手ぶらでは帰れないソラナーたちは、ヴァランティルの助手マスリン・ドリウの取引に乗って、帰路の時間を短縮する衝撃パルス・プロジェクターを盗み出すことにし、担保として両ソル=セルと、幼い子供たちを残して出発した……。

〈法〉付与機(GESETZ-Geber):
カーライト製で黄金に輝く、直径1126kmの球体。銀河点火弾、〈インシャラム〉と並ぶ、コスモクラート由来の胞子船派生技術である。第三の謎に述べられた〈法〉と、実際に関わりがあるのかは不明。2000万年前の、原混沌胞→混沌胞→混沌叢と〈負の球体〉化が進んだタレ=シャルムにおいて、秩序勢力の軍が侵攻する“門”を開くのに用いられた。
今回登場する《新生》は少々特殊なタイプみたい。

ヴァランティルとの再会や、終末戦隊〈トライトア〉の末裔がいまなお懲罰的な生活を強いられている星系でのマスリン・ドリウとの対決などを経て、エヴォラクスに戻ったローダンらは、コルウィン・ヘルタマーによって捕縛されるが、青い転子状船《光力》を指揮し、いまや〈秩序の総督〉と呼ばれるアラスカ・シェーデレーアによって救出される。

やがて、ヘルマターらが《ソル》を誘き寄せたのは、ソロニウム製の亜鈴船でなければ進入不可能なある特殊空間の存在するためと明らかになる――エヴォラクスそれ自体の内部に生まれた、原混沌胞――負の球体の卵――である。
ローダンはソル=セルで特異空間へと突入し、時空の迷宮に囚われた《ソル》本船を救出せんとするが、一方で秩序勢力は〈法〉付与機《新生》を派遣し、混沌に冒された宙域を“除染”しようと試みる。物質の生まれる前の空間に“初期化”する――すなわち、エヴォラクスを含む周辺宙域の完全破壊である。
救出作戦は成功するのか。破滅のカウントダウンを止めることはできるのか!?

と、まあ、盛り上がったような、そうでないような全12話。
最後、《光力》に招かれたローダンに、アラスカ・シェーデレーアのプロジェクション(記録映像)が謝って曰く、あなたをタレ=シャルムへ運んだのはわたしです、とか。そのときのセルンは洗浄・保管してありますんで、着替え終わったら、エロイン・ブリゼルが元の時点に送り返します。なお、今回の事件の記憶は、数週、あるいは数ヵ月のあいだ、消去されて戻りません。その方が、諸々、都合がいいですよね?
帰ったら、銀河系の〈劫火〉、不可逆までアト3日である。確かに、その方がよかろう。んじゃ、アンドロイド君、送還よろしく~。

……というところで、それまでむっつり黙っていたエロイン・ブリゼルが、

「着替え終わったら送り返せとは言われているが、セルンを渡せとは言われていない」

ちょw 『勇者召喚の使命は果たしたけれど、過労で倒れた旧友の執事が帰してくれない』ですかwww
なんでも今回、アラスカはコスモクラートの指示に逆らってローダンを助け、かつ《光力》を長時間離れて行動していたせいで、現在治療カプセルから出られない状態らしい。エロイン・ブリゼル先生、ご立腹である。

「しかもエヴォラクスを放棄せざるを得なくなり、高次勢力間のバランスが大きく揺らいでいる。アラスカが対処できない以上、おまえがやるのだ。さ、《ソル》へ戻れ」

ローダンと亜鈴船の旅はまだまだ終わらない。
続きは2020年3月予定! 乞うご期待!! って、おいおい(笑)

#しかし、ジェネシスとも神話とも、まるで関係なかったなぁ……。

Posted by psytoh