2900話:莫迦には見えない新星!? 灯火は点された!

ローダン

と、ゆーわけで2900話あらすじ第2回目(笑)
……んーと、やっぱり終わらんかったorz
かなり強引なアダウレスト登場()の後、舞台は再び水星へ――

一応、ここまでのお話あらすじは、
■ごやてん:2900話:怪奇! 水星の地下に謎のレムール兵馬俑を見た!!(爆

(承前)

ローダンとファリエさんが転送機でアサルク・シティに到着したのは、標準時で日付が5月15日に変わったころのこと。
前回のようにのんびり祖父と孫の行楽気分ではなく、緊急事態ということで《ラス・ツバイ》へと10名の戦闘集団派遣も要請し、ファリエさん自身もすでに戦闘服に着替え済み……なのだが、なぜか、まるで人目をひかない様子。
群衆は、なにやら興奮して「何か」を待っているような雰囲気なのだ。ニュースを確認しても、とりたてて大事件の起きた風でもない。

「ひょっとして、キミがファリエかな?」

そこに現われたのが、これといって特徴のない顔立ちの40代とおぼしき男性。だが、レスラー体型なせいか、フォーマル・スーツがもうぴちっぴちである。胡散臭そうな表情を隠しもしない、けんもほろろなファリエさんの対応に、アウチ、と顔をしかめた男性は、

「私はキント。オピテル・キントだ」

ナンパかと思われた男は、ヴィンガーデンが派遣を約束したTLDエージェントであった。
ファリエさんの操縦するグライダーで遺跡に到着すると、デジオ・ガッタイが一行を待っていた。
ハレム・アーミーが妨害フィールドを放射しはじめ、転送機を停止せざるを得なくなったらしい。何名か取り残された作業員もいるそうだが、資源探査ボーリングの際のシャフトを再び開放し、救出の準備を進めていた。

前回の時点からの、洞窟内の監視映像を早送りしたところ、PEW活性化と思われる発光現象とともに急激に動いた彫像の首の動きは、まもなくゆっくりとしたものに戻っていた。ただし、すべての彫像が、顔をそろえて同じ方向を見据えた状態で。
惑星の固有運動に影響される様子のないことから、ローダンはその仮想点がソル系外のどこかと予想。水星中央ポジトロニクス〈セト〉への計算を依頼する。
と、そこで、オピテル・キントが、

「すみません。いまの映像、もう一度再生していただいても?」

幾度かの再生と拡大をくりかえして、キントの目にとまったものが、一同の前に明らかになった。
対戦車障害物のように、細い軸3本が縦横に組み合わさったもの。サイズは最長部分で5ミリ。
そして、驚くべきことに、転がるように移動する“ガーダー(桁)”は、壁から出てきて、壁へと消えていた。そこが岩ではなく、流体であるかのように。

「確率論的にこいつがひとつってことはありえないが……難しいな」
「難しいって、何がです?」

キントのつぶやきに首をひねるガッタイ。
ファリエさんとキントが、異口同音に、

「こいつをつかまえるのが」

1時間後、10名の兵士と同数のタラ=VIII=Uh型ロボットが現地に到着。
タラのうち4体は牽引ビーム放射器装備。拘束フィールド・ジェネレーターを搭載したゾンデ多数。“壁抜け”については、5次元性妨害フィールドが有効と予想された。
予想外にwキビキビしたファリエさんの指示に従い、要所要所に兵とタラを配置する形でシャフトへ進入するローダン一行。地上からはガッタイが3Dマップを参照しながら誘導する。並行して、すべての民間人が遺跡から退去した。

ローダン、ファリエさん、キント、そして牽引ビーム搭載のタラを連れた兵4名が、ハレム・アーミーの洞窟上部に設置されたプラットフォームに散開して、待つこと数分。
センサーが反応した瞬間、ゾンデの拘束フィールドが展開し、4本の牽引ビームがこれを支えた。難しい、とか言っておきながらちょっぱやの逮捕劇であった。

ハレム・アーミーの洞窟に続く通路脇の仮設ラボで、サンプルの分析を開始。拘束フィールドにとらえたままなので、外部からの拡大撮影が主となる。やや膨れた接合点。各枝にセンサー類と思われるリング。先端部は凹状となっており、おそらくその内部には……武器。
これ以上は分解するしかなく、レーザー・ボーリング装置やらマイクロ分子破壊装置などを駆使してどーにかする他ないかと思われたその時、遺跡各所に配置された兵たちから急報が入った。最大2mの異なるサイズのガーダー・ロボットが出現、攻撃をかけてきたのだ。その数、およそ10体。

ラボにも1mほどのガーダーが現われ銃撃戦となるも、オピテル・キントの予想以上の活躍もあり、どうにか撃退に成功する。このレスラー体型、実はエルトルス人の血を引いているとか。まあ、さすがにどっかの“コンパクトタイプの環境適応人間”ほど人間離れはしていないようだが。某USO司令とか、いま何してるんだろか。
そして、活動を停止したロボットは――最初に捕獲したサンプルを含め――中心部に出現した“ブラックホール”へ吸い込まれるように消えていった。分子破壊フィールドと局部的重力増加のコンビネーションによる、自爆装置の一種らしかった。
これ以上の情報は、どうやら入手できないようだ。

休養を取るためカラド・タウンへ戻り、レストランへ繰り出したローダンとキント。喰って太れの文化も受け継いだのか、キントの健啖にはローダンも舌を巻いた。

「ところで、ここらでは近々、なんぞ重大イベントでもあるんですかね? モグモグ」

ローダンも気づいていたのだが、アサルク・シティ同様、ここでも群衆はなにやら落ち着かず、何かを待っている様子だった。
大半はテラナーだが、ブルーの肌であったり鱗であったり、羽を持つ種族も見受けられる。そして、老若男女を問わず、誰もが同じ雰囲気を共有している。しかし、何を、なのかは、おそらく彼ら自身にも説明できないのではないだろうか。水星執政府への報告後、宇宙心理学者とパラアナリストの出動を要請した方がよろしかろう。

だが、一行がアサルク・シティへ出立しようとした深夜、先手を打つように“それ”は起こった。
群衆が夜空を見上げて騒いでいた。興奮して、家族や友人に何か叫んでいる。総合すると、こんな感じだ。

星だ――3つの星――いや、ノヴァだ――ケンタウルス座の方向へ一直線に並んでいる――!

メンタル安定化処置を受けたローダンもキントも、そこにはなにやら光のしみが生じている、程度にしか見えない。そもそも、恒星が一直線上に並べば、背後の2つは最初のものの影に隠れて見えるはずがないのだ。
つまり、この“灯火”は、パラ暗示的な性質の何かである。
直後に連絡のついたファリエさん――メンタル安定化処置済み――に「3つのノヴァ」が見えていると聞いて、ちょっぴり自信をなくす男たちであったが(笑)

一行がアサルク・シティ、水星執政官ドリス・ベニスに面会した明朝の時点で、すでにそれは社会現象となっていた。熱狂する人々が〈灯火〉の見える場所へとこぞって移動をはじめたのだ。
〈セト〉の報告では、すでにこの現象はテラや金星、さらに火星でも生じているという。
そして、悪い予感は当たるもので、ハレム・アーミーの“視線”も〈灯火〉の観測された方位と一致していたのだった。

テラニア上空に浮かぶ鋼鉄の蘭、太陽系政庁。
TV会議で悲鳴があがっていた。地球でも赤道以南の〈灯火〉が見える諸都市では、北半球から集まってきた人々によって日夜を分かたずカーニバルの様相を呈しているという。インフラは瓦解寸前だった。
水星でも、調査チームを編成しようにも人手が足りない状況だ。ローダンの提案により、グッキーが現地へ派遣されることとなった。メンタル安定化処置を受けており、なおかつパラ能力の“専門家”である。

太陽系政庁のポジトロン脳〈老師〉の分析では、水星、位置的に近かったテラ、ソルの反対側にあった金星、それから火星と、この多幸症的な騒ぎは水星からの距離に応じた順序で発生していた。小惑星帯以遠ではさほどの動揺が見られないことから、やはり原因は水星にあると推定された。
ケンタウルス座方向の〈灯火〉延長線上には、現在2つの恒星が確認されている。ソル系から12000光年のタルターン星系、同27000光年のオテルマ星系である。前者は一般的な主系列星。オテルマは5000年ほど前にヘリウム燃焼がはじまっているが、ノヴァになるにはまだ100万年以上かかるはずだったのだが――

「オテルマ近傍をパトロール中の巡洋艦からの計測レポートが届いています。予測より早く、実際にノヴァ化しているとのこと」

では、タルターンは?

「ハイパー通信リレーを介したジャーバッジ基地への問い合わせにこれまでのところ返信なし。ポジトロニクスによる自動返信もです」

タルターン星系では第2惑星マンダームに前宇宙飛行期の文明が確認されており、その観察のため第1惑星エペチュアンに有人基地が置かれていた。
ローダンは《ラス・ツバイ》で現地へ急行することを提案。高速、科学・医療チームも兼ね備え、なおかつ……万が一の接敵時に対応する戦力もある。
連盟主席シャロウンはこれを承認。同時に、ソル系を包むクリスタル・バリア展開を命じた。

《ラス・ツバイ》艦橋に到着したローダンは、艦長のエルトルス人カスカード・ホロンダー大佐、パイロットのアンドリス・カントヴァイネン少佐、連盟首席科学者であり、10年来の妻でもあるアトル人シク・ドルクスタイゲルに迎えられた。すでに発進準備は整っており、一部休暇からもどっていない乗員等もいたが、航行には支障がないと判断したローダンは、発進ごーの命令を下した。

(続く)

■Wikipedia:チェコの針鼠 (対戦車障害物)

Posted by psytoh