クルト・ラスヴィッツ賞2014受賞作発表

ドイツSF

6月14日付で、今年のクルト・ラスヴィッツ賞の受賞作が発表された。2013年にドイツ国内で初版刊行された作品が対象。ノミネート時の記事はこちら
授賞式は9月20日にライプツィヒで開催されるElsterconにて執り行なわれる。

主な受賞作(および得票順位)は以下の通り:

長編部門 Bester deutschsprachiger SF-Roman:

 1. Wolfgang Jeschke / Dschiheads / ジヘッズ (124)
 2. Georg Klein/ Die Zukunft des Mars / 火星の未来 (78)
 3. Karsten Kruschel / Das Dickicht / 藪 (75)
 3. Uwe Post / SchrottT / スクラップT (75)
 5. Dirk van den Boom / Kaiserkrieger / 皇帝の戦士たち (55)
 6. Matthias Falke / Bran / ブラン (49)
 7. Dirk van den Boom / Eine Reise alter Helden
  / いにしえの英雄たちの旅路 (43)
 8. Claudia Kern / Homo Sapiens 404 / ホモ・サピエンス404 (42)
 9. Frank W. Haubold / Das Todes-Labyrinth / 死の迷宮 (36)
10. Hannes Stein / Der Komet / 彗星 (35)
 X. 該当作なし (10)
※投票者57名

短編部門 Beste deutschsprachige SF-Erzählung:

1. Michael Marrak / Coen Sloterdykes diametral levitierendes Chronoversum
  / コーエン・スロッターダイクの正対して浮遊する時間宇宙 (88)

2. Erik Simon / Der Gesang vom Stierkampf / 闘牛の歌 (75)
3. Marcus Hammerschmitt / Im Krankenparlament / 罹疾議会 (58)
4. Thorsten Küper / Grosvenors Räderwerk / グロスヴェノルの歯車じかけ (58)
5. Frank Neugebauer / Milch für den Schlangenkönig / 蛇王に捧ぐ乳 (52)
6. Norbert Stöbe / Rette mich / ヘルプ・ミー (41)
7. Merlin Thomas / Operation Heal / 癒し作戦 (36)
X. 該当作なし (0)
※投票者38名

海外作品部門 Bestes ausländisches Werk:

1. Jo Walton / In einer anderen Welt / 図書室の魔法 (128)
2. Terry Pratchett & Stephen Baxter / Die lange Erde / 悠久の地球 (113)
3. Paolo Bacigalupi / Versunkene Städte / 溺れた街々 (99)
4. Kim Stanley Robinson / 2312 / 2312年 (85)
5. Rob Reid / Galaxy Tunes® / ギャラクシー・チューン® (60)
X. 該当作なし (0)
※投票者48名

ドイツSF大賞とのダブルクラウンとなった『ジヘッズ』の内容について:
舞台は、はるかな未来。人類は多くの惑星に移民し、入植し、変質し――それでも、やはり人類のままだった。
過酷な環境の惑星ホット・エッジには、遠い昔、地球を追われたカルト集団の末裔が生息しており、〈ジヘッズ〉と呼ばれている。政教一致の独裁者・大アルコンが君臨する民である。不具は両親の罪の顕在とされている――例えば、少年スークの親友アンゾが聾唖者であるように……。
スークがアンゾから“神の認めたもうた食肉”とされる動物ドンゴの「声が聞こえる」と打ち明けられてまもなく、アンゾとその母の姿が、村から消えた。自分もまた、大アルコンの粛正リストに載せられたことを悟ったスークは、村から逃亡する。

一方、ホット・エッジ・ステーション司令ウルフからの「現住種に知性保有の疑い有り」との通報をうけ、調査チームがホット・エッジを訪れた。アイリフ・エイヴラム教授と生物学者マウリヤ・フィッツパトリック、そして助手のサー・ジョナサン・スイフトである。だが、ウルフ司令は消息不明となっており、新しい司令はジヘッズと奇妙な協力関係にあった。知性種の疑いがもたれたドンゴは根絶やしにすべき害獣だという。
そして、ジヘッズにおいて、有色人種と女性の立場が著しく低く、科学は悪とされていることが、さらに問題を複雑にした。教授は有色人種であり、マウリヤは女性であり……サー・ジョナサイン・スイフトは知性化サイボーグ犬だったのだ。
さまざまな逆風を浴びながら、ドンゴの生態を調査する過程で、3名はジヘッズの少年スークと出会い――。

……というのが、各種書評やLeseprobe等をつぎ合わせて得られた導入部のイメージ。
「アッラーフは偉大なり!」というあおり文句や、そもそもの名称から、ジヘッズがイスラム教の流れをくむものであることは容易に想像できるが……有色人種排斥とか、どのあたりが混じったものやら。
宗教的な話が中心になるのか(教授は無神論者らしい)、ドンゴの「声が聞こえる」あたりから、超能力テーマもからんでくるのかは、まだわからない。アマゾンジャパンでも、Kindle版なら購入可能なんだよなあ。めんどくさい(笑)けど、Kindle買った方がいいかなあ。

以下余談:
『図書室の魔法』は、ふつーにおもしろかったです(小並感)。さくさく読めました。
でも、図書室自体は、物語にあんまり関係なかったよーな(笑)

■公式サイト:Kurt Laßwitz Preis

Posted by psytoh