エシュバッハ新作は『イエスのビデオ』の“続編”

ドイツSF, 書籍・雑誌

すでに4月上旬に、アンドレアス・エシュバッハが自身のサイトで公表していたのだが、次回作は今秋刊行で、ベストセラーとなった『イエスのビデオ』の続編『イエスの密約(仮題)』(Der Jesus-Deal)とのこと。

『イエスのビデオ』(Das Jesus Video)は1998年に刊行されたエシュバッハの出世作。
イスラエルでの考古学発掘調査の際、ほぼ2000年前のものと同定された人間の頭蓋骨とともに、SONY製のビデオ・カメラの取扱説明書が発見された――しかも、開発中で、市場に出回るのは3年後の製品の。頭蓋骨にも現代医療による治療の痕跡が存在したことから、この人物は西暦紀元元年前後に、なんらかの映像を撮影するためにタイムトラベルしたのではないかという仮説が立てられた……そう、イエス・キリストの映像を。カメラを見つけるため、メディア王とそのブレーンとなったSF作家、ヴァチカンから派遣された秘密部隊、そして取説第一発見者の学生が、三つ巴の争いを演じることに――という作品。
1999年度のラスヴィッツ賞、ドイツSF大賞のダブルクラウンに輝き、Wikipedia(ドイツ語版)に掲載されただけでも9カ国語に翻訳されている(邦訳もある)。また2002年には映画化され、『サイン・オブ・ゴッド』のタイトルで日本でも販売されている(いた?)。

で、その“続き”のアイデアは、それ以来ずっとエシュバッハの脳内でくすぶっていたらしい。ただし、「“続き”とか“前日譚”という表現は正しくない」と、エシュバッハは述べている。スティーブンやカウンら主要登場人物は変わらず登場するらしいが、『イエスのビデオ』を読んで想像するものとはまったくちがう物語になっているだろう、と。
また、「一方の終わったところから他方は始まり、他方の始まったところで物語は終わる」とか、「『ビデオ』と『密約』は、“量子もつれ”を起こした、相関する粒子のかたわれ同士」という表現も用いている。単なるループともまた違うのだろうか(笑)

刊行時期についてエシュバッハは、「秋のいつごろか詳細は未定。しかし、10月のフランクフルト書籍見本市までには出ているだろう」と書いており、それを受けて一部のサイトでは「10月発売」と銘打たれていたりする。
タイムトラベルが下敷きになった小説ではあるが『ビデオ』はハヤカワNVレーベルから文庫化されたように、SFというか冒険小説的なところがあった。本作はいったいどんなストーリーになっているだろうか。
今Lübbe社のページを確認したら、10月8日発売予定に。あ、ジャンル、スリラーだ……。

■エシュバッハ個人サイト:Im Herbst kommt DER JESUS-DEAL
■Bastei Lübbe社:Der Jesus-Deal

Posted by psytoh