ローダン・ヘフトのストーリー

31. 太陽系政庁 / Die Solare Residenz

2000話-2099話 / 新銀河暦1303-1304年
銀河系、セガフレンドー銀河、〈インシャラム〉、そして〈ドムラトの地〉にて

主な登場人物

  • ペリー・ローダン……トレゴンの第六使徒、LFTテラ政庁首席
  • アトラン……セガフレンドー銀河へ転移した《ソル》司令
  • デロリアン・ローダン……ローダンの息子、〈宇宙感知者〉
  • トリム・マラート、スタータック・シュレーダー……若きモノクローム・ミュータント
  • モンキー……オクストーン人、〈新USO〉大提督
  • ボスティクI世……アルコン水晶帝国皇帝
  • モルケロ・ゼーレンクヴェル……テラを脅かす謎の存在
  • ヴレヘモ・ゼーレンクヴェル……〈騎士の星室〉テクノロジー保管庫の番人
  • モホデー・カシャ……最後のキムバン人、ドムラトの騎士
  • キントラディム・クルックス……《ゼンタファー》設計者

ストーリー

ラージサイクル「トレゴン」の第5アンダーサイクル。

トレゴン創設をめぐるダ・グラウシュ協定が結ばれてから12年――故郷に帰還したペリー・ローダンは、新たな第一テラナー、マウレンツィ・カーティスと協力し、テラの再建にあたっていた。実質的な政府の第一人者、〈テラ政庁首席レジデントとして。復興のシンボルとしてテラニア上空に建造されたのが太陽系政庁ソラー・レジデンス――蘭の花を模した巨大な浮遊ビルであった。LFTは、トルカンダー侵攻にはじまった度重なる痛手を、ようやく脱しようとしていた。

しかし、テラとトレゴンに、新たな暗雲が迫りつつあった。
アルコン皇帝ボスティクは、その覇権への野望をもはや隠そうとしない。テラからわずか850光年の距離にあるトプシダーのオリオン=デルタ星系への強襲――喉元に刃をつきつけられた状態のテラは、新開発の〈アーゲンフェルト・バリア〉により、主星系の防備をかためることで応じた。
また、LFT圏内で大量に生まれた新世代の超能力者、いわゆる〈モノクローム・ミュータント〉は、単なる社会問題以上のものとなりつつあった。その出自がモノスの遺伝子実験であること、超能力の発現に対する“保安スイッチ”として残る寿命がわずか数年でしかないことが立て続けに明るみに出ると、数万人のモノクローム・ミュータントがテラに集結。アンデス山脈のパラ・シティに立てこもってパラ・ブロックを形成した。
そして、〈鼓動〉に姿をかくした超知性体たちの不在――〈力の真空〉状態が、暗黒の存在を引き寄せる。すでに他のトレゴン5銀河には、正体不明の侵略者があらわれ、死と破壊をもたらしていた。そして銀河系においても、他者に憑依し破壊活動をおこなう謎の存在〈モルケロ・ゼーレンクヴェル〉が出没する。モノクローム・ミュータントの少年トリム・マラートの協力を得て、ローダンはそのシュプールを追うが……。

〈鼓動〉のメガ=ピルツドームを抜けて未知へと旅立った《ソル》――アトラン率いる遠征隊は、セガフレンドー銀河に到達していた。だが、なんと遠い……1800万年もの過去へと転移されていようとは!
そして、セガフレンドーを統治する〈銀河冠〉は滅亡寸前だった。セガフレンドーを庇護する超知性体エスタルトゥ――“現在時”のおとめ座銀河団の十二銀河を統べる〈それ〉の“姉”!――は、トレゴン創設を試みた後、敵の罠にはまって消息を絶った。その間隙をぬってデューベンシス銀河から侵攻したムンデーンの武力は圧倒的で、もはや抵抗の方策は残されていない。〈銀河冠〉と、エスタルトゥの礎たる〈草父〉たちは、すべての希望……最後に残った〈草父〉の苗木を《ソル》に託した。なぜなら、〈それ〉の指令に記された目的地〈アウロッホ・マクソ〉とは、はるか昔にエスタルトゥが誕生した星系なのだ。
銀雲に包まれたアウロッホ・マクソ第55惑星から、エスタルトゥの力の残滓たる蝶〈キュム・ジョリアー〉の卵を回収した亜鈴船は、ムンデーン司令官ランリックの執拗な追求を逃れ、次元トンネルを経由してマイクロ宇宙〈インシャラム〉へと脱出する。インシャラム――太古、コスモクラート・タウレクによって創造されたという“超知性体のゆりかご”に満ちたプシオン・エネルギーは、未来からの来訪者たちの前に、ひとつの奇跡をしめした。
キュム・ジョリアー、〈草父〉アリステスの苗木、そして生まれてまもないデロリアン・ローダンに宿るエッセンスから、ひとつの超存在が誕生する――〈それ〉が!!
〈それ〉……正確には、後に超知性体〈それ〉の中核となるエンティティは、ムンデーンに蹂躙されるセガフレンドーを去った。そして《ソル》もまた、〈鼓動〉のそれと対になるメガ=ドームに開かれた、現在への扉をくぐった……。

銀河系では、事態は予想もしない急展開をむかえていた。
モノクローム・ミュータントのパラ・ブロックを繋留点として、モルケロの故郷〈ドムラトの地〉から、もうひとりのゼーレンクヴェルが到来した。しかも、彼、ヴレヘモ・ゼーレンクヴェルは、背いた弟子を罰し、超兵器〈幻影服〉を奪うと、そのパワーを用いて超知性体へと変貌したのだ!
時は新銀河歴1303年12月26日、ところはアルコン星系。おりしも、皇帝ボスティクが〈神聖帝国〉の創立を宣言した、まさにその瞬間のことだった。死に瀕したパラ・シティのモノクローム・ミュータント34000名の意識を併呑した超知性体〈ゼーレンクヴェル〉は、偶然それを目撃したペリー・ローダン以外の誰ひとり知らぬまに、アルコンの中枢をその支配下に置いた。
そして、進撃を開始したアルコン艦隊は、アーゲンフェルト・バリアに守られたソル星系をも蹂躙。プランタグーから駆けつけたシフティング艦隊までがネガティヴ超知性体の猛威の前に壊滅するにおよんで、銀河系は〈ゼーレンクヴェル〉に事実上屈服した。
それでもテラナーはあきらめない。ソル系を脱出した太陽系政庁からのゲリラ放送〈政庁通信〉が、いまなお抵抗の意志がくじけざるものであることを銀河系に布告する。
そして、〈ゼーレンクヴェル〉の呪縛を脱しテラ側に亡命したボスティクと同盟を結んだローダンは、TLDや新USO、そして皇帝親衛隊クララセンの勇士たちとともに、超知性体に闘いを挑む……。

一方、物質シーソーによってヴレヘモと交換される形で〈ドムラトの地〉に漂着したトリムとスタータック、ふたりのモノクローム・ミュータントは、謎に満ちた〈ドムラトの騎士団〉が統べる銀河で、帰還の道をもとめて放浪する。
星間転送ネットワーク〈ドムラトの網〉で結ばれ、同時に宇宙航行を禁じられた島宇宙は、ふしぎな縁で銀河系とつながっているかのようだった。そこはゼーレンクヴェルの故郷であると同時に、《マテリア》司令トル・サマホが誕生した銀河であり、かつまた、太古にひとつのトレゴンの試みが失敗した舞台でもあった。絶対真空の場が消失した後に残された、孤独なメガ=ドームがその証。そして、巨大な円蓋柱から突如として出現した船は……《ソル》!

過去からの生還に際し、何らかのミスによって、亜鈴船は本来の目標〈鼓動〉ではなく〈ドムラトの地〉へと転送されてしまったらしい。事態を把握する間もなく、騎士の艦隊である〈軍団〉によって包囲される《ソル》。アトランは、ドムラトの騎士とのコンタクトを試みる。
300万年前、ドムラト近傍の島宇宙を壊滅させた秩序と混沌の大戦争をいきのびた種族によって築かれた平和の楽園――それが、〈ドムラトの地〉。秩序の勢力とも、混沌とも一線を画したその存在は、また逆に、つねに両勢力に蹂躙される危険をはらんでいた。まして、この銀河が、かつて高次勢力の介入をこばむトレゴンであったとしたら、なおのこと。ドムラトの騎士たちは、その恐怖ゆえに、トレゴンに関する情報を可能なかぎり蒐集したという。
だが、ドムラト騎士団の創設種族たるキムバン人の衰亡とともに、その秘密を知るものもまた減少していった。現在、トレゴン情報を一手ににぎる最後のキムバン人モホデー・カシャは消息不明。そのシュプールを追ったアトランとトリムたちは、謎に満ちたキントラディム・クルックスの創造した超常空間《ゼンタファー》に進入していく……。

Posted by psytoh